応急仮設住宅の建設について、
震災を経験する度に、徐々にその「思想」が変わってきていることは、既報の通り。
と同時に、「復興住宅」ということについての考え方も変化してきている。
地域社会が過疎化し、こうした災害からの復旧にあたっても
資本主義的な論理が貫徹する社会らしく、
決められた条件の中での最適解的な「営業活動」を展開しうる
大手プレハブハウスメーカーが、人材の集中投下によって
被災者からの受注を大きく取り込んでいく構図が出来上がっている。
地域の工務店は、応急的なメンテナンス作業に振り回されている間に、
肝心の復興住宅新築受注活動は手を付けられず、
そのすき間を埋めるような大手メーカーの周到な営業活動が展開されるのだ。
そのような「資本の論理」自体はやむを得ないことでもあると思う。
すべての新築需要に、中小工務店が対応できるわけはない。
「住み分け」ということも市場に置いては当然のことだと思います。
しかし、地域工務店は地域の製造業、ものづくりの中核的な存在であり、
メンテナンス、長期的な保守管理においては、必要不可欠な存在。
そうした存在が存立し得なくなることは,地域社会の損失が大きい。
第一、小なりとはいえ、地域に納税して循環することで経済が回っていく存在。
そうした存在であると思いますが、しかし、
やはり従来は横の情報交換、情報レベルにおいて、大手と比較して
大きく劣っていたことは否めない事実だと思います。
家づくりを考えれば、まずはモデル住宅のような場所で確認して
さまざまな情報に接して、ユーザーが判断できるような体制整備が欠かせない。
この写真のモデルハウスは、熊本県・益城町での地域工務店グループの
共同モデルハウスとして建設された。
阪神淡路、東日本大震災と、災害の経験が知見となって集積して、
このようなカタチのものが出現してきたという進化を喜ばしいと思います。
プランとしては、4間×6間の24坪から、
玄関部分が凹んだカタチでの22坪プランです。
オプションで太陽光発電を載っければ、ZEH基準も満たせるという性能仕様。
さすがに温暖地・熊本、無理のない断熱仕様でOKなのですね。
屋根庇も合理的に考えられていて、デッキなど内外の融通無碍な暮らし方にも
対応できるプランになっていた。
これで1000万円程度で復興住宅が可能とされていました。
工務店グループとしては、ある程度思い切ったプランですが、
まとめ役として地元建材店が介在して、こうした共同モデルハウスが実現した。
それも応急仮設住宅団地の目立つ一角で、集会所である「みんなの家」の目の前。
行政側の後押しも感じられます。
こういった「コンパクトハウス」志向、確実にいまの時流にも存在する。
いろいろと興味深い動きだと思いました。
Posted on 8月 19th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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