秋田の設計者・西方里見さんは、
紺屋の白袴よろしく、ご実家の古い家のまま長年居住されていたとか。
それがついに最先端の断熱住宅を新築されたということでしたが、
ニッポンのお寒い住宅事情は、そう一筋縄では解決しない。
住宅ストックは6000万戸を超えているけれど、空き家も820万戸。
このうち省エネ基準以上の家は、どれくらいか、
北海道ではようやく半数程度ではあろうと思いますが、
ニッポン全体を考えると相当に「お寒い」状況であることは明白。
西方さんの去年までを引き合いにしたら恐縮ですが、
わかっていてもできない事情もあるし、そもそも寒い家に住んでいて
それが寒い家だという認識もなかなか人間は持たない。
慣れ,習慣というのは人類が獲得してきた環境適応力にも由来する。
快適というか、不快でない空間の質というものを、
普段感じていない人は、そういうことへの想像力が持ちにくい。
しかし、生活シーンの中でそういうことに気付くチャンスは多い。
マンガを考えていて、そんな生活者に寄り添う視線で
さまざまな生活シーンを考えてみると、数限りなくそういうチャンスは見えた。
このチラ見せのワンシーンは、子ども1人夫婦2人のくらしを想定したけれど、
ニッポンの寒い家、朝起きてトイレに行く瞬間からスタートする(笑)。
わたしは、北海道での高断熱高気密住宅体験が長くなって、
「あさ、廊下が寒くてトイレにいくのが一大決心」みたいな
住体験、心理をすっかり忘却していたのですが、
それが関東でたくさんの住宅を取材してみて、
生活者のみなさんと取材で話していて、みなさん一様に
「廊下の寒さ」を訴えられた。まるでそれが常識だ、みたいにして。
そこではじめて気付いた、そうかニッポンの家は寒いんだと。
北海道の30年以上前の現実がニッポンでは延々と続いていたのですね。
寒けりゃ、あたたかくすればいい、という当然のことが、
そんなことができるわけがない、先祖代々こういう環境で生きてきた、
「いやー、さむい」とは口走るけれど、それは一種の愚痴、
冬の挨拶口上だよ、おまえ、みたいな生活文化のようにも感じた。
どうもそういう江戸っ子的な勢いに押されそうになるのですが(笑)、
一方では北海道ではそういう愚痴を言わなくても済むような
そういう生活の先進性が実現してしまっている。
そういった落差を強く感じ続けていたのであります。
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Posted on 3月 1st, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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