鎌田紀彦先生と愉快な北海道の作り手たち、第2弾であります。
この建物は、NEDOの補助金を使った実験住宅。
札幌地元の大洋建設さんが建てたものであります。
大洋建設という名前の語呂からなのか、太陽熱を利用したもの。
導入当初はブームのようになっていたけれど、
なぜか、日本では太陽熱給湯がそれほど普及してこなかった。
原理的には単純で壊れにくく、実用性は高いけれど
最初の市場導入段階での「訪問販売」手法が、商道徳的に反発を受けたのか、
技術そのものはいいものなのに、日本ではあまり進化しなかったのです。
しかし太陽光発電がエネルギー変換効率が15-20%と言われるのに対して
太陽熱給湯は、効率は50~70%にもなると言われています。
家庭全体でのエネルギー使用の60-70%にもなる暖房と給湯のエネルギーを
大きく削減するための技術探求になるワケなのです。
その技術のReチャレンジ的な動きとして、
経産省・NEDOの補助金事業として、全国で太陽熱利用の住宅が7軒建てられ
この建物は、北海道札幌という寒冷地での実験として採用されています。
断熱的には板状断熱材フェノマボード135mmの外断熱と
吹込断熱を105mm軸間に充填しています。Q値的には0.7レベル。C値は0.3。
太陽熱利用の他に、
・真空断熱材の実験的利用
・日射熱のダイレクトゲイン利用
・暖房効率を高めるため「ダブルスキン」と呼ぶ温室空間で暖めた空気を
エアコンに吸気させ、さらに高効率にさせる工夫
・2階には26度で融解するPCM床材を採用
などの設備的な実験装置を装備させています。
こうした設備機器での環境的なふるまいは、
設置されたセンサーなどで一元的にデータ管理されています。
ちょっとした設置箇所の変更や、アイデアを加えても
「へんな実験はやめてください」と
即座にNEDOから言われてしまう(笑)のだそうで、実施主体ではあるけれど、
国費の事業としてはモルモットのようにさせられもするようです。
現状ではあきらかに過剰設備のようで、
夏場には大量にできる給湯温水を廃棄するしかないのだそうです。
鎌田先生からも、北大の荒谷先生が採用された太陽熱給湯のことにふれられ、
「夏場にお湯ができすぎて、そのライフスタイルが身についてしまって
暖房の方にもっと温水が必要になる冬場に困ってしまう」
というきわめてアンビバレンツな事態についての指摘もありました。
季節の変化や、住む人のライフスタイルなどに
どのように最適化させるのか、そのところの「調整知見技術」的なことが
いちばん重要なポイントというところでしょうか。
外部の設置状況については、いろいろな意見が飛び交いました。
「もうちょっと、人間的なデザイン処理が・・・」っていうのが一般的意見ですが、
設置角度自体は、やや大きめの「庇」として悪くはない。
その下に配管が剥き出しというのは、どうなんだとかの声も。
「ポンピドーセンターみたいな表現もあるから、正直でむしろいい」
など、相半ばしているというのが実践者たちの声。
ただ、これは実験住宅なので、施主さんの立場の意見はどうか。
こういうのを好む人もいそう、とは思うのですが、
さて現実的に、毎日こういう外観の家に帰りたいかどうか。
配管剥き出しのような家で、奥さんが耐えられるのかどうか、わかりません。
これからの「スマートシュリンク」の時代に、たくさん必要になる隣地との空隙を
計画としてどのように実現するのかというのもポイントかと。
さまざまな意見、発言が交差して、カオス状態になっておりました(笑)。
Posted on 6月 25th, 2015 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅性能・設備
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