先日観てきた、国立博物館「大神社展」に展示されていた
豊国社に遺された屏風絵の抜粋画、というか一画面。
あまりの見事さに驚嘆してしまいました。
戦国末期・秀吉の死後、祀られた豊国神社での祭礼時のにぎわいを描いたもの。
これは「風流踊り」とも「浮流踊り」とも名付けられた様子を描いている。
この時代には、出雲の阿国による「ややこ踊り」など、
女性による芸能が広く展開していた。
その後、江戸幕府によって
阿国さんが創始したとされる、女性による「かぶき」芸能が禁止されるようになるのは、
なにごとかを表しているのかも知れませんね。
そこから男性だけが出演を許される「歌舞伎」が成立していくようになり、
女形というような芸能領域が出現する。
出雲の阿国さんのことを知りたいと思っても、
なかなか記述された記録には表れてこないようです。
一説では、性倒錯的な筋書きで、
男装した阿国さんが女装した茶屋芸者さん役の男性役者と
「茶屋遊び」するシーンがある舞台が
「定番」演目になっていた、と伝わっています。
まことに人間の本質に根ざしているともいえます。
想像ですが、たぶんこれらの女性芸能は、
大寺社や、権力機関の女性による管掌機構・大奥などが
庇護し監理していたのではないかと思っています。
この豊国社での祭礼も、淀君などの女性による権力機構が、
祭礼の華やぎ演出のために監理して
動員された芸能者グループが存在したのではないか。
まぁいわば、戦国AKB48のような華やかな意匠をまとった女性たちの
コーラスダンスのような催事が行われていたと想像するのですね(笑)。
この時代の美意識は、茶室であるとか、
絵画などでも、まっすぐに現代に繋がってくるものが感じられるのですが、
このようなきらびやかな描写に出くわすと、
そこに展開したであろう情景の空気感のようなものが
直接的に伝わってくる感じがあります。
若い女性たちによるコーラスときらびやかな色彩の衣装による
幻惑的な陶酔感を誘うダンスが生気を持って香り立ってくる。
日本女性の美しさのある普遍的表現には違いないと思い至らされます。
文献記録では表現されていない
こういった部分までがわかりやすく伝わってくる絵画表現の力。
それが歴史であるのか、芸術であるのか
まことに境目のない表現物の開示が、博物館展示の魅力なのだと思います。
建築もいわゆるデザインと機能性の間をゆれ動いていると思うのですが、
人間が取り組んでいくものって、
結局そのような揺れ動きの中に、一瞬放たれてくる光芒のような部分が
その本質を伝えてくれるのではないかと思われてなりませんね。
Posted on 5月 15th, 2013 by 三木 奎吾
Filed under: 日本社会・文化研究
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