今週も岩手に来ています。岩手というと宮澤賢治ですね。
先週も「イーハトーブな家づくり」みたいなことを書きましたが、
宮澤さんのああいった「夢想世界」についてだんだん背景がおぼろげに
見えてくるような気がしています。
それって、やはり寒冷という地域らしい条件がまずあって、
そういう環境条件の中で夢想・妄想をふくらませていく、
心理過程を想起すると北海道人として激しく通底する部分が見えてくる。
凍てつく寒さの中で暮らしていて、満天の星空を見上げたとき、
「銀河鉄道」という夢想を持つには寒冷が大きくメンタル支配したと知れる。
たしかに寒冷は人間にとってキビシイ条件ではあるのだけれど、
同時に人間の想像力、創造力にとってある豊かな表現を生む機縁になっている。
その内的世界の共有感を、宮澤さんの世界観に持たされるのですね。
そしてこういう「地域らしい文化・内面世界」的なものも
一般人には体験できることは少ない家づくりという創造の機会で、
やはりきわめて重要なファクターとして考えたいと思い至る。
そういう文化に寄り添って内面が豊かになれるような暮らし。
寒冷であるとか、蒸暑であるとかの自然条件にできるだけパッシブに
十分に対応させることはもちろんの前提条件として、
そこからさらに文化性、内面生活的豊かさが喚起される、
そういった「地域らしさ」というものも大きくあると思います。
ひとが、他のどこでもない「その場所」に住みたいという心理には
こういった内面的な部分の充足感もきわめて大きい。
もちろん、現代世界のなかでの最新の世界観を共有したい
というような価値感も同時にあると思います。
人類進歩の最新の到達地点ということへの強い興味は当然でしょう。
最先端のライフスタイルの革新に「繋がっていたい」ことは当然の欲求。
このことは長く空間的な「中央」への拝跪を押しつけてきた。
ニッポンで言えばTOKYOという存在がある文化的中央性を
強く地域に対して強制し続けても来たのだと思う。
そういう中央が生み出した生活文化的「最新性」もあったと思う。
しかし現代社会が過密化をどんどんと進展させ続けて
いまや、TOKYOがライフスタイル的に魅力的かと言えばそうとも言えない。
街や文化カルチャーとしては魅力は持っているだろうけれど、
「暮らしのいごこち」というような居住皮膚感覚については、
むしろ北海道などの寒冷気候対応を技術進化させた地域の方が
より世界の最先端、あるいはごく近しいレベルに到達している。
箱としての内部気候、暮らしのイレモノとしては地方の方が進化している。
今の時代は、住宅文化についてそういった局面になっているのではないか。
そういうなかで「中央」勢力とでもいえるハウスメーカーの一端でも
こうした「いごこち」品質を謳う企業も出てきている。
そういったなかで、さらに地域の作り手たちが存在感を高めるには
こうした地域らしさということの再発掘が欠かせないのではないか。
ほかのどこでもないこの場所らしい魅力を感じられる家づくり。
地域の作り手には、いまそういった感受性が求められていると思う。
<写真はReplanWEBマガジンより>
Posted on 11月 8th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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