熊本での「震災対応」視察で、大きく気付かされたこと。
それは地域の大手ビルダー・エコワークス小山社長から発せられたコトバ。
「神戸でも東日本大震災でも、地震のときどんなニーズが発生し
地域工務店がどう対応すべきか、がまとめられていなかった」
という深刻な、住宅業界としての問題点でした。
震災被害は不幸なことではあるけれど自然災害であり、避けることはできない。
そうであれば、どう対応するかが問われなければならない。
地震になれば、基本的な人間生存条件としての住宅が危機に瀕する。
その住宅供給を使命とし、同時に地域に密着し、住民に身近な対応事業者である、
地域工務店の立場になって、どう対応すべきかの「マニュアル・方針」がなかった。
確かに、東日本大震災では被災地域が広範すぎて、
それぞれの工務店・地場住宅企業が情報的にも断絶してしまっていた。
とりあえずの応急的対応にだけ振り回されざるを得ず、
一段落して気がついたら、緊急メンテナンスは頼まれたけれど本来の住宅再建では
手際のいい「営業対応マニュアル」を持っている大手ハウスメーカーが仕事を
根こそぎ持って行ったという事例も多かった。
かれらは、営業マニュアルも整備していて震災の近隣地域、全国から
「営業部隊」が該当地域に集中投下されて、住宅再建の仕事にフォーカスした営業を行う。
まことに、「ムダなく」実利に集中した対応を行っていく。
地域工務店という組織は、こうした「情報対応力」に問題があるとされた。
今回の熊本地震では、こういった地域の立場に立ってどう対応すべきかについて
経験知を踏まえた「対応作戦」が、ようやくまとめられたのです。
エコワークス小山社長は本来IT系の勉学をされていた方で、こうした対応力がある。
氏としては、この対応マニュアルを全国の工務店に情報力として
より広範に拡散したいという希望を持っている。
自社サイトからもダウンロード可能なようにもされていますが、
全国で営業対応しているメーカー・LIXILの協力が得られて、
この対応マニュアルに基づいてさらにわかりやすくまとめられた資料が作られたという。
氏のプレゼンで、実際に工務店にどんなニーズが殺到するものか、
具体的なリアリティを持って理解することができました。
図で表現させていただいたのは、氏のまとめたプレゼン資料の一部抜粋。
とくに印象に残った部分を3つ、引用させていただきました。
熊本地震で5兆円、東日本大震災で16兆円の「被害総額」だったものが、
発生が確実とされている首都直下地震や、南海トラフ地震では、
それぞれ被害総額が200兆円、150兆円と推計されている。
過去の歴史的震災と比較しても現代は人口・経済規模に級数的に違い、
この計算には十分な蓋然性を感じさせられます。
日本の国家予算は一般会計と特別会計総額で200兆円前後の現状です。
これと比較してみても対応は国難レベルになることは可能性が高い。
2枚目の図ではどんな状況が地域の事業者に寄せられるかの具体的な規模。
地震直後には電話なども寸断されているけれど、それが回復したらすぐに
既存ユーザーから大量の「ヘルプ」が殺到してくる。
エコワークスとそのグループでは、実に既存顧客の6割から緊急出動要請が来た。
電話総数が3,000件だったということ。
こういったニーズに対応する中で、必要不可欠な対応マニュアルを作っていった。
まことに具体的で生々しい現実を教えていただきました。
最後にこれらに企業としての対応をするに際に企業内での情報共有手段を
緊急対応として絶対整備しておく必要があるとされた。当然ですね。
エコワークスの企業グループでは、震災前から社内情報システムとして
Facebookをインフラとして情報ツールに採用していたとのこと。
さすがにITに強い小山さん、震災時でもこうした情報手段は「パケット通信」で、
携帯電話通話が途絶したとしても、通信可能なツールであるとして採用していた。
まさに実践的で現実的な必要情報だと強く感じさせられました。
小山氏からの希望もあって、このように情報拡散させていただきました。
Posted on 8月 9th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
コメントを投稿
「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」
You must be logged in to post a comment.