上の写真は合成であります。
先日、小樽市内にある「小樽市公会堂」を見学して来たのですが、
その折りに離れのような位置に移築された個人所有だった能舞台があったのです。
北海道は日本人文化の歴史が浅く、このような伝統芸能への興味は
ほかの地域と比較して格段に少ない地域なのだろうと思います。
北海道、能舞台というように検索しても、この小樽市公会堂のことくらいしか出てこない。
「歴史的能舞台」としては北海道唯一というように記載されているから、
能という日本的伝統芸能への北海道人の興味の幅というものが知れる。
現状でも能の公演というのはごく稀だということです。
数年に一回あれば、ということのようですね。
写真は、自分で撮影したいまのこの能舞台の様子に、
かつて所有者だった岡崎さんという小樽の商家の方が、
能舞台建築当時に行った能の公演の様子の写真をサイズを調整して、
イタズラ的に嵌め込んでみた合成写真なのです(笑)。雰囲気を感じてください。
現状のこの能舞台は、右側に工事用のシートが張られているのがご愛敬です。
岡崎さんという方は、まことに好事家だったようで、
本格的に衣装も整えられての能興業だった様子が偲ばれます。
すごい巨費を投じた「数寄」であったことは間違いありませんね。
今に至るも、北海道ではほかに能舞台が存在しなかったというのですから、
こういった孤高でのありようは、一種奇観だと思わされる次第。
参考までに元写真は以下の2枚です。
わたしは岡崎さんのように自分で興行したいとか、演じてみたいとかには、
興味もその資金もまったくありませんが(笑)、ただ、歴史に興味を持ってくると
日本人の体技を活かした芸能というものに興味が深くなってくる。
古くは雅楽とか神前での舞、神前神楽などが芸能の源流なのでしょう。
天皇の前で貴族の娘たちが着飾って踊る宮廷行事があったとされ、
で、その場で天皇の恋が芽生えたというような故事もあったようです。
そういう非日常性世界、いわば「劇的なるもの」への偏愛は自然に存在する。
そこから里神楽というように進展していって、徐々に民衆の娯楽の一種として
日本に「芸能」という文化が根付いていったのでしょう。
戦国期の出雲の阿国のようなのは、やはり体技が基本での視覚娯楽だったのでしょう。
伝統芸能を見ていると、いかにも日本人的な体動作のカリカチュアを見ることがあり、
そういう体動作が、忘れられずに伝統芸能には残されていると、
そんな気付きに至ることがまことに多い。
日本人は身体的に感情を表出することに、非常に感受性の高い民族ではないかと、
そんなふうに思えてきてならないのです。
そんなことを考えていて、能の世界でも
写真のような現代化に取り組んでいる動きがあるようです。
野村萬斎さんが踊る体動作をCGアートとして視角化させて舞台背景として
その動作からのイマジネーションの広がりを映像化した。
それを背景として野村萬斎さんが踊った様子が放送されていた。
ことしの正月に東京で公演が行われ、その記録のテレビ番組をBSで見た次第。
伝統は常に革新されていくことで継続していくのでしょう。
日本人独特の体動作への興味、意識させられるなぁと思わされますね。
Posted on 7月 27th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 日本社会・文化研究
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