きのうの西沢さんの美術館に続いて
安藤忠雄さんの「十和田市民図書館」再訪であります。
この図書館には中庭にサクラの木が建築時に残されていて、
外部のサクラ並木との共演が意図されていると言われる。
建築はある用途を持って機能を果たすべく作られるけれど、
そこに存在し続ける意味では、景観としての美的要素をもっとも担うものでもある。
美的な要素というのは、その時代の「空気感」を伝えるので、
いま、このように作られ続けている安藤忠雄さんの作品も、
やがて後世から、「この時代は・・・」という時代の息づかいのようなものを伝える
そういった記憶再生装置として機能していくのだろうと思います。
安藤さんはコンクリートの打設に強いこだわりを持ち、
その型枠に流し込む瞬間には、型枠をガンガン叩きまくるといわれます。
鏡のような反射光を発現させるために、
表面仕上げに繊細な感受性を込めていることが伝わってきます。
2枚目の写真は、なにげにシャッターに収めたけれど、
このコンクリート壁面とサクラの並木道には、
建築と自然環境との対話的なモチーフを込めていたに相違ないと思わされる。
そのように鏡面に近い肌合いが生み出されれることで、
たしかにこの歩道には、ある緊張感が派生してくる。
考えてみると日本建築のなかの城郭建築では
石垣が、このコンクリート壁と似たような位置にあるのでしょうね。
石垣の場合は、その組成感やある幾何学形状が志向され、
それに対して、たとえば弘前城のようにサクラを群生させることで、
「コントラスト」が強調され、それが日本的伝統として意識されるような
感受性への刷り込みが行われたのかも知れません。
そのように見てくると、
1枚目の写真でも、隣接する公園緑地からの
朝の反射や投影があって、それを映し出す壁面に
自然のうつろいとともに、ある種の意図的な表情が生み出されてもいる。
幾何的な形態と、微妙に方向や組成に違いがあるそれぞれの壁面が、
まったく違う表情を見せてもいました。
先日の難波和彦さんの講演でも安藤忠雄建築に触れていましたが、
安藤建築でもたとえばヨーロッパの寒冷気候地域に建てられた建築では
コンクリート壁に断熱材がサンドイッチされ、
また複層ガラスの窓が装置されたりしているそうです。
自然と建築、その「環境」という要素について、
いろいろに思いを巡らされる散歩路の光景、表情でした。
Posted on 5月 1st, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 「都市の快適」研究, 住宅マーケティング
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