今回は期せずして十和田市に2泊していたので、
たいへん楽しく朝の散歩を「官庁街通り」で散策していました。
まったく不勉強で、この通りがサクラの名所だったとは知らなかった。
ちょうど満開から散り始めの時期に遭遇して
弘前城とは違って、あんまり観光名所化していないこともあって、
まことに豪勢に花見を満喫させていただいていました。
北海道ではヤマザクラが主流ですが、
こちらの方はソメイヨシノやシダレザクラが絢爛と咲き誇っている。
いかにもニッポン感が漂っていて、
北海道人には垂涎の光景が広がっております。
で、この十和田官庁街通りに面して、
くだんの十和田市現代美術館が建てられている。
設計は金沢21世紀美術館設計のSANAAの片割れ、西沢立衛氏。
金沢21世紀美術館もそうですが、まことに「透明感」にあふれていて、
これでもかと透過した内外が特徴的。
この十和田市現代美術館では、たくさんの展示棟ボックスを
光のトンネルのような通路で繋いで、
ところどころでは、官庁街通りに対してみごとにオープンな展示棟もある。
いくつかの野外展示物、「駒街道」という官庁街通りの別名を意識した
花飾りのお馬さん像なども展示されている。
ほかにも石森章太郎風のクモ型ロボット生物や、
対面側には草間彌生さんのカボチャ風野外展示を中心にしたサイトもある。
この美術館、何回かは訪れているのですが、
今回はサクラの季節に遭遇してみて、
その存在感や建築としての意図を明瞭に見せられた思いでした。
海外の建築家からは、日本の現代建築家に対して、
その日本の建築基準のゆるさ、環境基準の低レベルぶりを指摘され、
建築表現のあまりもの自由さを揶揄されているということですが、
そういう意味では現代建築表現において世界共通競争が成立しない。
この十和田市現代美術館にもその思いは強い。
2枚目の写真の展示棟の窓はまことに大胆に3層分スケスケですが、
その透過性の高さを見るとシングルガラスなのかも知れない。
まぁこれは日本の建築基準の問題であって、
それが「認めている」表現手法を限界的に活用しているという意味では
とやかくは言いようがないとも思われます。
建築デザインとしては、その許容された範囲で可能な表現を示すのであって
個人としての表現者として、それは当然なのだろうと思います。
ただ、建築の原則としてはこういったボックスがたくさんあるというのは、
無限に外皮表面積が巨大になっていくだろうから、
熱環境的にはナンセンスではあるのだろうと思います。
金沢21世紀美術館で年間の維持光熱費がいくらであるかは、
市当局からは開示されなかった、と
前真之東大准教授のプレゼンテーションで聞いた記憶があります。
一方で「観光資源」要素としては、話題性も含めて考えると
金沢21世紀美術館もこの十和田市現代美術館も大きく成功しているのでしょう。
こういった建築デザインの志向性。高断熱高気密・サスティナビリティが
今後「義務化」されていく趨勢の中で、どのような表現に向かっていくのか、
そんなことを考えさせられ続けております。
Posted on 4月 30th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅性能・設備
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