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【いごこちよく住む 仙台パッシブハウス-01】


当たり前だけれど、人は国の省エネ目標達成のために
家を建てるのではなく、
それぞれのシアワセを実現するという
希望を持って家を建てます。
「ドイツパッシブハウス基準」の目指すものに
シンパシーを感じるのは皆同じだと思うのですが、
基準をそのまま日本に持ち込んできても、うまくいきません。

その理由は、ドイツと日本の気候風土、文化的な違いです。

ドイツはもともと、日本の寒冷地よりもやや温暖だけれど、

冬場の日照が極めて少ないので、ひたすらに断熱が効果を発揮します。

この冬場の日照条件において、日本とは違いがありすぎるのですね。

日本は南北に長く、寒さの質も各地域で違いがあります。

ドイツよりはるかに寒冷な地域も多いけれど、一方で冬場の日照を
かなり大きく利用することが可能な地域もまた多い。

住宅が備えるべき性能品質スペックは、あくまでもその地の気候風土、
人の暮らしへのフィットがもっとも大切。
つまりは、日本にふさわしい
オリジナリティのあるパッシブハウスが求められているのです。



そんな中、東北での高断熱住宅をリードする北洲ハウジングが、
仙台市内で意欲的なプロジェクトへの取り組みを見せています。

名付けて「プレミアムパッシブハウス(略称:PPH)」。
今でこそ、ペアガラスの樹脂サッシは常識化してきましたが、

東北では北洲が1985年に本州地域で最初に住宅に標準採用。

パイオニアとして、東北・本州地域の住宅づくりを先導してきました。
樹脂サッシがようやく日本の窓のシェアで10%を超え、
標準になりつつあるこのタイミングで、北洲として次代の標準になる家、
いわば企業ポリシーとしての先導性を示すものとして建てた住宅が
このPPHです。

これは、丹念に「人をつつむ」空間品質を追求していて、
現在時点で考えられる最高水準の技術を実証する住宅だといえるでしょう。

ただし、UA値競争やZEHなどでの有利性をむやみに自己目的とせず、

あくまでこの地域での「住む品質」にこだわった住宅提案。

居住者を募集して、居住体験をフィードバックしてもらい

さらに住まいの「いごこち」品質を高めようという企画。

環境性能についても、温湿度や消費電力などの測定をし
東北大学工学部と共同でその成果を発表していく考えとのことで、
作り手の目線だけでなく、住まい手の細やかな感受性によって、
居住品質をさらにふるいにかけようとしています。

作り手の自己満足や競争心理優先で、
本当にユーザー本位の家づくりができているのだろうか、
という業界への問いかけにもなっています。

PPHでは、そのコンセプトを実現するために、
機械設備に過度に頼ることなく、
建築的な「断熱」「蓄熱」「遮熱」を通じて
理想の温熱環境に迫っている。
断熱性能的には
UA値(外皮平均熱貫流率)0.23W/㎡K。

室温を一定に保つ働きをする潜熱蓄熱塗り壁材「エコナウォール25」や、

冬期日射取得と夏期遮熱を兼ね備えた窓「パッシブフェンスター」を採用。

さらに、こうしたスペックで下記のような「3つの達成基準」を目指しています。

1.ZEH Ready 40

建物の外皮性能(断熱性)を高めることで、省エネルギーを実現。

具体的にはBEI 0.4以下に設計し消費エネルギーを大幅削減。

<ちなみにBEIとは、基準一次エネルギー消費量に対して当該物件の
設計一次エネルギー消費量が何パーセントであるかを示す指標。
値が少なければ少ないほどエネルギー消費量が少ない。>
2.Fuel Poverty 0
(ゼロ)
住先進国イギリスでは年金・収入の10%以上が光熱費に使われてしまう
世帯
「Fuel Poverty(燃料貧困)」が問題視されていることから、

日本でも光熱費が年金・収入の5%以下になるようにエネルギー設計。

3.Asset Value 30

住宅は設備に頼り過ぎると、維持・交換費用が膨大になる可能性がある。

長期にわたる省エネ効果の持続や、経年劣化が少ない部材選び。

30年間コスト試算、省メンテで快適性が続く住宅を目指しています。


特に2、3などの基準、設計視線は非常に興味深いので、
次回以降、このテーマに注目してこの住宅を再度取り上げることにします。


この住宅は、一般公開は4月29日~5月7日に実施する予定とのこと。

居住環境のほか、「快適性・いごこち」を考えた家づくりで、
人のくらしへの配慮といったソフト面も大いに参考になると思われます。

住宅建築に携わる多くの人に有益な住宅体験になるでしょうね。

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