年末休み建築探訪、紹介した他にもいくつかの建築を見てきたのですが、
それほどピンとくる建物にはお目にかかれませんでした。
名前は高い建築家の作品でも、
ボリューム感や造形的に親近感を持てないものも多かった気がします。
で、ふり返って見て
一番最初に餅つきに行ったいわき中之作・清航館は
やっぱり私の好きな古民家だということに思い至りました。
地元で設計事務所をやっている豊田善幸さんが、自ら買い取った建物。
今回の餅つきのために、わざわざ主屋から出てきた
土をこね上げて、かまどとその小屋まで造作していました。
津波被害を受けたこの地域に残っていて
しかも「解体工事費」は震災当時、公共予算が付けられていたので
もう少しで解体される運命だったこの建物のことを知って自ら買い取った。
そういった経緯のことも聞いていて、何度か取材した建物です。
いまは、「レンタル古民家」として、イベント会場として
地域のみなさんに開放されています。
隣接した設計事務所兼用住宅に住んで、自ら管理もおこなっている。
2階には田の字型の4部屋間取り。
そのなかの主室とおぼしき部屋には、螺鈿の細工が施された
床柱もあって、この建物の栄華を偲ばせます。
伺った餅つきの日には
たくさんの子どもたちが、4つの部屋を丸く走り回っていて
伝統的な間取りの自由さの意味合いを教えてくれるようでした。
そうなんです、子どもたちは、建築がもたらす「安心感」を
こうした間取りから感受性豊かに感じ取っているのではないか
そんな強い思いがしてきました。
平面図で見れば、単純すぎて設計者としては躊躇するのかも知れないけれど
使う側からすると、その空間的わかりやすさは比類がないのではないか。
普段はふすまで仕切られた空間が、ハレの日に
開け放たれて、自由奔放な空間が出現するダイナミズムは
個人主義的な「表現型」建築とはまったく別種の
コミュニティを仕掛ける装置の側面が強いと感じられた。
そうした内部空間では、さまざまなデザインの建具類が、
そこに暮らす人々の感受性を豊かに花開かせていたのではないか。
こういった古民家建築には、きっとまだまだ十分には解明できていない
日常生活の創造性がたくさん仕組まれている、
そんな思いが強く感じられてなりません。
わかりやすく目を奪うような仕掛けではないけれど、
いわば漢方薬的なデザイン装置の知恵が至るところに感じられます。
Posted on 1月 4th, 2015 by 三木 奎吾
Filed under: 古民家シリーズ
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