写真は古くからの商家のなかの土間にしつらえられた「かまど」。
3口もの鍋穴が開けられていて、
大量の調理が可能になっていました。
住宅というものは、なによりも寝食、ということばがあるように
安全に寝ることと、心安らいで食にありつける、というのが基本要素。
安全に寝られる、というほうは社会的な安全性にも機縁するので、
住まいだけの問題ではありませんが、
食べる方は、常に家が中心であり続けてきた。
外で食べる、というようなことはよその家に呼ばれるとか、
冠婚葬祭くらいしか、機会がなかったでしょう。
日本の律令時代の税に、各地の名産品を取り立てるとか、
国司などの高級官人が赴任するときにその地で歓迎の接待を地元民に強制する、
というような「ナマ」な税制、システムがあったのですが、
それくらい、「外で食べる」ということは希少価値だった。
したがって、食という基本は、
ひたすらに「住まい」の基本要素であり続けてきた。
この「かまど」、大変立派なものでびっくりしたのですが、
基本的には赤土のような土で固めて焼成させたものでしょうが、
そのうえから焼き物を仕上げるように平滑な表面仕上げが施されている。
一種、工芸品的な仕上げになっているのですね。
こういう仕上げというのは、家の持ち主のDIYになるものとは思われない。
この家が商家ということで、都市住宅だったので、
たぶん、こういう造作作事をなりわいとする専門家が存在したのではないかと思います。
ほかの住宅要素と比較して、飛び抜けて豪華さを感じさせる。
この商家には住み込みで働く奉公人が中2階に多数いたようなので、
このような大量調理道具が必要だったのでしょう。
現代のシステムキッチンと比較しても
その実質的な生活実態の豊かさのレベルがしのばれる。
遠く生家を離れて奉公する人間たちに、
擬似的な家族的共同性を植え込んでもきたとも思われます。
現代の、個住とコンビニという生活実態と比較して、
どちらに「豊かさ」があったのかといえば、論を待たないのではないでしょうか?
どうも、わたしたち現代人の貧しい暮らしというものが
身に迫って感じられてなりません。
NPO住宅クレーム110番|イザというときに役立つ 住まいのQ&A
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Posted on 8月 4th, 2008 by replanmin
Filed under: 住宅性能・設備
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