先日、某所にて思わず撮影した家であります。
まぁなるべく特定できないように配慮してみましたが、
いかがでしょう、なにかがおかしいとおわかりでしょうか?
そうなんです、家があきらかに傾いているのです。
建築では「不同沈下」というように表現します。
木造では、家の水平が保たれるように細心の注意が払われます。
そのために鉄筋コンクリートで基礎が打たれ、
その上に土台としての横架材が渡されて、そこに柱が立てられていく。
基礎は、建築年代によって置き石や束基礎などの変遷を経て
いまの鉄筋コンクリート布基礎に至っているのですが、
古い家ではいまだに束基礎が見られることがあります。
そのような基礎が経年の地盤面の変化で
ゆがみを生じ、バラバラに高低差が生じてしまって
「不同」な「沈下」状況が発生してしまう。
その典型的な事例だと思います。
なかなか見られないので、つい興奮を抑えきれなかった。
地盤面というのは一定の形状・状況を保っているように思いがちですが
寒冷地などでは冬場の地盤凍結、春になってのゆるみを
経年で繰り返すことで、平坦な地盤面に変化が生じやすい。
そのような被害を防ぐために、「凍結深度」以下にまで基礎を深く打ち込む。
凍結深度というのは、その深さからは凍結しないという地盤の深さ尺度で
地域によって違いがあり、札幌では60cm、道東では100cmという地域もある。
この事例では、まちがいなく束基礎で、
それがバラバラの高低差を生んでしまっている。
その結果、建物自体が傾いてしまったのですね。
まず第1に危険なのですが、
見逃せない大きな健康被害として、平衡感覚のマヒがあります。
わたしも水平が維持できていない建物の取材経験がありますが、
入っている間中、名状しがたい苦痛が感じられる。
目に見えない不安をもたらす疼痛とでも言うのでしょうか、
たぶん三半規管が異常信号を発し続けて、
脳に負担を掛けるのではないかと推定しています。
結果としては吐き気が襲ってきたり、目眩に似た感覚が出たりする。
わたしの体験では、ここにもう1時間いてくれと頼まれても
ムリ、という気持ちを抱きました。
このような家でずっと暮らしていると、どうなるのか、
ちょっと想像できません。
家と人間の関係、
こんな事例も含めて、奥行きが深いものがありますね。
Posted on 6月 26th, 2014 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅性能・設備
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