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軒の出

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北海道の住宅と本州地域の住宅でいちばんの違いは軒の出。
日本建築はずっと日射遮蔽をいちばん大きな建築性能要素と考えて
日射遮蔽を優先したデザインをしてきた歴史があると思いますが
そういった建築は、北海道の積雪条件の地域では
まっさきに軒が雪の重みでへし折れてしまった。
写真は広島市内の大名庭園「縮景園」の庭園建築ですが、
驚くほど軒の出が張っていて、
屋根の三角がものすごく強調されたデザインになっていました。
たぶんこういうデザイン感覚が日本人には刷り込まれてきた。
北方圏デザインの意識を持つ人間以外は
ほぼ無批判的に受け入れていきたい「日本的」デザイン感覚なのだと思います。
こうした深い軒の出は
美しさを持っていると同時に、強い太陽日射を遮り
室内には一回地面にバウンドした光が反射光として取り入れられる。
こういった日射に対する感覚が日本人にどんな精神性をもたらせたのかは
自分たち自身のこととして、興味がありますね。
しかし北海道では、東北までは無理矢理に受容させた日本建築文化が
まったく無力に通用しなかった。
いくら名前のある建築家であろうと、気候条件に無知なものは無知だったのだ。
建てられた日本的な軒の出の建物は
ことごとく失敗して、そのまま作り手は帰っていった。
それでもここで生きていくことを選択した北海道人たちは、
この軒の出を放棄せざるを得なかった。
無落雪屋根という雨や、雪への対策という止むにやまれぬ動機からの選択をした。
太陽日射は、かぎりなくたくさん取り入れたいけど、
しかしそのために冷気が室内に入ってくることは絶対に許容できない。
採光はしたいけれど、熱損失はしたくない、というのが
北国人としての自明の結論になった。
そもそも、「日射遮蔽」という概念自体がほとんど北海道では死滅した。
お陽さんの光が熱くて困る、という体感は、
それを希求することはあっても、ありえない感覚として寒冷地の常識が育っていった。

今日、ふたたび「日射遮蔽」ということが、
住宅性能の必須要件として基準に盛り込まれることになって来た。
さて、北海道の住宅はそういうことを受容するのかどうか、
興味を持ってみつめています。

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