環境省の肝煎りで全国に計画し建設された20箇所の「エコハウス」。
東大の前真之先生から、その実態についての本も出版されましたが、
タイトルは「エコハウスのウソ」。
かなり痛烈に、大開口と吹き抜けといった
「エコハウスと言えば、これだよ」的なデザインへの警告がなされていましたね。
北海道東北の4事例以外は知らないのですが、
断熱への理解がなくそういったデザインを持ち込めば、
夏は灼熱地獄、冬は寒くていられない空間になることは理の当然。
その意味では指摘は至極当然だと思うのですが、
それを寒冷地の人間が指摘しても、無視される。
東大の先生がそれを正しく指摘したから、説得力が違うのだと思います。
まことにその通りなんですが、
前述の通り、北海道東北の事例にはさすがにそういった指摘はあてはまらない。
近くにいるのに、なかなか来られなかった下川町のこの建物を見て、
そのように実感いたしました。
下川町は、北海道の北部に位置します。
旭川からさらに北上した名寄市から東に約20kmほど。
さすがに札幌からも遠いので、建設されてからかなり、3年くらいは経ちますが、
一度も訪ねられませんでした。
というか、わたしは下川町ははじめての訪問であります。
街の活性化について、たいへん熱心に取り組んできていることは聞き及んでいます。
環境省のエコハウス事業にも早くから目標を定めて取り組んで
多くのライバル自治体を制して,北海道の2箇所のひとつを占めました。
北海道のエコハウス事業では、日本建築家協会北海道支部が
プロポーザルのアドバイザー的な役割を果たし、
この下川町のエコハウス選定に当たりました。
という次第なんですが、そういった経緯は事前にいろいろ情報も入っていたのですが、
どうも「環境省によるエコハウス事業」というのが
なぜか、ピンと来なかったのです。
選定して建設するのはいいけれど、そのあと、どういう展開になるのか、
単なる事業費1億円(案件1件あたり)の
バラマキに終わるのではないかという危惧を感じていたのです。
そこに、先述の前真之先生の本が出版されて、
危惧が現実化してしまったように思っていたワケです。
というような先入観念があったのですが、
この下川町のエコハウスは、建築自体も堅牢な高断熱高気密ぶりでいいのですが、
それよりも、隣接して町の温泉施設が建設されていて
そちらは鉱泉ながら、バイオマス燃料による加温、
そして珍しい炭酸成分が含まれているということで話題にもなっている施設なのです。
そういうことなので、維持管理もうまく組み合わされていて
町からもかなり離れているにもかかわらず、
通年で、けっこうな利用者がいるようなのです。
わたしが行ってきた先週も、大人数の宿泊があったようで、
管理の方にお願いしたところ、
「宿泊の後片付けは、まだ出来ていませんよ・・・」ということでした。
利用されているのは、まことに喜ばしい。
年末12月はじめには、わたしもあるご一行に同行して宿泊するかも知れません。
建物自体は、まことにステキで、なかなかいい。
前真之先生の書かれたように、大開口と吹き抜けではありますが、
高断熱高気密の建物では、むしろ好ましいと思いました。
やはり北の森の様子が室内に飛び込んでくるここちよさは格別でした。
Posted on 7月 21st, 2013 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅性能・設備
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