住宅の取材をずっと続けてきて、
やはり一番わかりやすい住宅の表現というのは
その外観になります。
いわゆる「見てくれ」でありますね。
住宅の価値って、さまざまなことがあるでしょうが、
そういったことが総合されて表現されるひとつの大きな指標に
外観ということがあるのだと思います。
歴史という、人間が営んできた営為の総合という視点に立って見れば、
わたしたち人類は、ついこの間まで、って、たかだか2千年前までは
おおむね竪穴住居に基本的に住んでいたし、
その前で言えば、洞穴のような自然を利用した住まいに住んでいた。
まぁ、そこまで考えていくとキリがないので
竪穴が、縄文以降の日本列島社会では普遍的だった。
屋根の造作・素材で言うと茅葺きが、竪穴以来の「伝統」。
いわゆるアースカラーであり、この多雨気候の列島地域では傾斜屋根が基本。
都市住宅ではなく、農業を基本とした社会という伝統から考えれば
寄せ棟というのが、台風の多い気候条件には戸建て住宅としては似合っている。
都市では、集住のためにどちらかの面を裁ち落とすような
切妻が基本になっていった。
素材は竪穴以来、圧倒的に木造が基本であって、
形体・間取りもきわめて「合理的」な建築構造が目指されてきた。
こういった「歴史的民族体験」を通した結果、
写真で見るような「外観」が日本人のDNAには
住宅の外観として刷り込まれてきたのだろうと思います。
不幸なことに(!)、現代では住宅建材が大量生産の社会的余韻のなかで
広範に「新建材」として供給され続けていて、
サイディングであるとか、民族的な視覚経験には存在しないような素材が
ごく一般的に供給可能な価格と、社会的流通、制度的な法体系でも
そういった構造が支配的なので、
みんなが普通に、「非伝統的」な住宅を建てていくことになる。
それはやむを得ないことだとは思うのですが、
さて、そのように建てられる住宅、その外観って、
民族的な住宅認識にまで高まって、残り続けていくのでしょうか?
わたし、実はここのところで、強く疑問に思い続けています。
鉄板屋根とサイディングの建物が、この写真のような伝統的民家に対して
新たな「民家建築」として、果たして歴史的評価に耐えて存続していくのだろうか?
素材と、社会基盤が大きく変わらざるを得なかった、この列島社会で
民家建築は今後、どのように推移していくのだろうか、
人間社会というのは、変化していくモノと
変わらないものがあるだろうと思います。
住宅は、あきらかに大きく変わってしまったけれど、
果たしてそれで、本当にいいのだろうか?
ずっと、そういった疑問を抱き続けている次第であります。
みなさんはどのようにお考えでしょうか?
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Posted on 5月 4th, 2012 by replanmin
Filed under: 住宅取材&ウラ話