きのう紹介の「横浜・六ツ川の家」の続篇です。
この住宅は密集住宅地、しかも高低差のある土地に建っていますが、
開く、閉じるの「環境応答」を明確にした住宅だと感じました。
まず熱環境的には、UA値で0.48、Q値で1.488というレベル。
北海道の現行基準並の性能値を確保し、
その上、気密性能も0.3としっかり確保されている。
したがってエアコン暖房+冷房の効率が温暖地域としては格段に高くなっている。
で、内部プランではキッチンに対面するダイニングが吹き抜けになっていて
その奥に「畳コーナー」的な居間がある。
居間はローソファーがしつらえられた空間で、窓も小さくしてあって、
むしろ家族での静かなひとときを楽しむ感覚の空間。
「家の中心」というのは、この吹き抜けに面したダイニングであり、
さらにそこから開放的に出入りできる「外の居間」だと感じられます。
平面図で見ても、この外のリビングは家の雰囲気を支配している。
面積的にもダイニング+居間と同程度の広がりがある。
ダイニングを中心にして、静かな内の居間に行くか、開放的な外の居間に行くか。
そういう作られようになっている。
たぶん、夏場には外の居間は本当にシームレスに繋がった空間でしょう。
そのような暮らしようを考えれば、過密密集地であるけれど、
高低差のある立地条件というのは、一転して最高の環境条件になる。
外部からの視線とはかなり距離があって、普通の暮らしでは
まったく気にする必要のないレベルになっています。
温暖地域であるメリットを実感できる内と外のバランスだと言える。
冬場でも日本最高レベルの「日射」条件になるこの地域では
まさにごくまっとうで環境応答的な生活装置と言える。
そんな家の雰囲気を表現するように2階の子供室には
アスレチックネットまでが装置されているし、
外リビングにはブランコも設置されている。
アクティブで開放的な夫婦+女の子2人の家族の暮らしようが見えてきます。
過密都市環境の中で、開放的に外部と応答するプランというのは、
逆に壁や塀でがんじがらめに閉じることでしか実現できないと考えるのが
一般的な「解」になると思うのですが、
この家では奇跡のように自然に実現している。
一方で、窓や開口部を閉じたときの住宅の「環境性能」が
そういったアクティブさを生み出す背景的なバックボーンになっている。
「暑さ寒さを忘れる」住宅性能が、自然環境への積極的な生活姿勢を生む。
閉じたときの快適性がしっかり確保されている安心感が、
暮らしに見事なコントラストを演出するのだと思います。
北国発祥の住宅技術が、温暖地での暮らしをもっと彩り豊かにさせている。
そんな強い印象を受けたヨコハマ・六ツ川の家でした。
Posted on 9月 27th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅取材&ウラ話
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