断熱を厚くする。
言葉で書けば、ごく単純なことのように響く。
しかし、構造材自体の寸法105mmの断熱材充填は当然として
その外側に安定的な断熱層を付加していくというのは、
そう単純な事柄とは言えない。
建築構造としては、あくまでも主体の105mmの柱構造で持たせているので、
その外側の断熱は、あくまでも「付加」。
しかし、さまざまな自然条件に対して、保守させていかなければならない。
そういうことを、建て主が納得できるような「合理的なコスト」で
達成していかなければならない。
実験ではなく、実際の経済行為として納まる範疇にしなければならない。
1件だけ、実験的にできました、コストは見合いませんでした、
では、実際の住宅建築の進化形とは言えない。
厚く断熱すれば、こういういいことがありますよ、
といくら声高に叫んでも、その具体的な手法を明示されなければ、
現場で建て主と向き合って、家を造っている工務店には無意味。
戦い方を具体的に解析努力する、よすがを現場は求めている。
先日現場見学した、旭川・芦野組さんの住宅は385mm断熱。
矩計図を見てみると、外壁の構成は以下の通り。内側から順に
105mm-16kgHGW充填断熱
9mm-構造用合板
0.2mm-防湿気密シート
140×2(280)mm-16kgHGW付加断熱
透湿防水シート
18mm-通気用胴縁(タテ@455)
12mm-小巾板(ヨコ@235)
20mm-樹脂モルタル下地テラコート
という構成。総厚みは、444.2mmという分厚い壁になる。
熱性能的には、以下のような計算結果。
外皮平均熱貫流率(Ua)で、0.19。
たぶん、このあたりが限界的な外壁厚みと言うことになってくるのではと、
そんな印象を持たされました。
というのは、窓からの日射取得を壁厚が邪魔するようになってきて、
そのロスを考えると、これ以上外壁を厚くはできないのではないかと
そのように思われるのです。
また、市街地で壁厚が450mmということになってくると、
それ自体の「建蔽率」専有部分が大きくなりすぎて、
土地コストが大きな比重を占める地域では、現実的ではなくなる。
現状の断熱材進化、コストバランスから言っても、
臨界点に近づいていると実感できます。
赤外線画像でも、木製でEPS断熱材をサンドイッチした換気用の窓が
いちばん熱損失が大きくなっているとのこと。
こういった断熱厚が、一般的・現実的な住宅で実現できるコストに
納められているという事実が、
寒冷地日本・旭川の最先端レベルの高さを表していました。
Posted on 3月 23rd, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅性能・設備
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