きのう、札幌市内は雪まつりの特異日。
市内中心部は、どこに行っても駐車場が満杯状態。
そんななか、市内でもほぼ真ん中で、大通会場にも200-300mと
ほど近い都心型マンションをリフォームした現場を見学。
交通立地のいいマンションって、
中古であろうが、その立地性で今後ニーズが高まるように思っています。
このマンションも名古屋在住の現代アート作家の方が
札幌での工房兼用的「別荘」として利用するという用途でのもの。
大都市札幌の現代的利便性をフルに享受して
用途としては、生活というよりも少し非日常的なステージに、という希望要件。
どうも、こういった希望要件での需要には
古い札幌都心型マンションというものは似合っていそうな気がする。
マンションって、日本で提供されているものは多少古くても
耐震強度など、スケルトンとしての耐久性は高いものがあると思います。
さてそういった希望に対して、建築家・五十嵐淳さんは、
こんな改造を提案して応えたという次第です。
まずはスケルトンに還元して、できるだけシンプルな空間獲得を目指した。
水回りのための「水勾配」確保の必要があるので、
新設した床面はやや高めにつくられ、電気配線など必要な装備を収容できた。
天井はどうしても撤去できない「銅管」や換気ダクト以外はすべて撤去して
コンクリート素地に還元してから、白く塗装。
キッチンは造作の建具でまるで壁面収納のように仕舞い込まれ、
寝室空間もカーテンで仕切られた細長い空間に納められて、
きわめてシンプルな広めの空間が確保できた。
床は、表情の豊かな木質フロアが一面に敷き込まれて、
天井の質感とあいまって、モノトーンな静寂が意図されている。
それをさらにテーマ性豊かに感じさせてくれるのが、
窓面側に造作された「間仕切り壁」。
これは、いかにも一般的なマンションの掃き出し窓の無機質感への緩衝装置。
タテ横の寸法感覚がほどよく、室内に導入する光や風景が制御されている。
間接照明が窓面側に仕込まれているので、
そういった意図がさらにコントラストが際だたせられている。
わたし個人的には、この間仕切り壁、茶室の床の間的なものと思われました。
できるだけシンプルに造作された室内空間に対して、
この仕切壁は、光や眺望を制御する装置として、
いろいろな表情を暮らすひとに見せる演出装置のように思われた次第。
窓面には、遮光カーテンやレースというように多重での
採光・眺望コントロール装置が備えられています。
考えてみると、現代のマンション改造って、
利休さんの時代からの茶室建築と似通った創作的気分が感じられる。
現代の町家としての集合住宅・マンションを還元したら、
どうも、茶室建築にやがて通じていく設計モチーフになっていくのではないか。
そんな自由さを感じさせられた。
でもこの間仕切り壁、
北海道の建築家である五十嵐淳さんの意図開示では、
右手寝室側に設置されたFF暖房器からの温風送風を、
室内側と窓面側の両方に意図的に送る「仕掛け」として機能させているとのこと。
掃き出し窓として床面まで下りてくるコールドドラフトに対して
その端部まで十分な役割を果たしてくれるか、といったところですが、
バッファーというものが、機能的にもデザイン的にも二重奏になっている。
発想の部分にこういう温熱的意図を持って、しかも
有用なデザイン機能も果たしているということで、好感が持てました。
Posted on 2月 12th, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅取材&ウラ話
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