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石置き屋根

写真は、川崎市にある「日本民家園」のなかの古民家。
日本の民家では、このような「石置き屋根」が用いられることがある。
板葺きの屋根面に割り木を押さえとして渡して、
その棒状の割り木に石を敷き並べていっている。
用途としては、風の強い地域で屋根材の板が吹き飛ばされないように
という配慮が大きいのだろうと思われる。
藁葺きから板葺きになって、そこから瓦葺きになっていく
その中間的な形体の屋根仕様なのではないかと想像しますね。
地方によってはさらにこの石が、鉄平石が用いられたりしている。
平ぺったい石になれば、やはり瓦に移行する寸前という感じがよくわかる。
日本海側の北陸地域などに名残が観られるようで
その影響が比較的に強い北海道の西部海岸地域で、
古い番屋建築などに残っていることがある。
行ってみると実感するけれど、日本海側地域の風は半端ではなく、
たとえば、藁葺きなどの屋根では通用しなかったことが容易に理解出来る。
そういった事情が、こうした石置き屋根の成立に与っているのでしょう。
で、おおむね屋根傾斜はなだらかになっている。
このあたりも、たとえば雪深い山村の急勾配の藁葺き屋根との違いを
良く表現していますね。
やはり地域の風土が,そこに似合うデザインを生み出すということですね。
少ない材料の選択幅のなかで、知恵と工夫で
先人たちは最適な「地域に似合った家づくり」を選択してきた。

ひるがえって、
現代はその建築材料の供給が全国規模でフラットに展開して
それこそ全国どこでも同じような建材を使うのが
価格的合理性を持ってしまっている社会。
したがって、九州の最南端から北海道の最北端まで
ほぼ同じようにサイディングとカラー鉄板で仕上げられる。
今年度、国交省は「地域型住宅ブランド化事業」という
いわば、お仕着せのようなかたちで「地域らしさ」を全国の住宅生産者に
アイデアを出せと強いた。
地域らしい素材使いとデザインをユーザーに提供しろという次第。
ところが、どうもこの事業の受けはまったくよくないそうです。
東京を中心にした考えから発して、
地方らしさを競え,というような傲岸さを感じさせられて
無意識に反発をしたものか、
あるいは、これだけ全国一律的な建材流通状況のなかで、
実現している価格合理性を、地方の側で放棄しろ、と強いているように
そのように受け取った部分があったのかも知れません。
ひとびとの「暮らし」のありようにしても、
ほぼ全国共通のテレビを媒介とした文化的共通性が異常に強いのが日本社会。
こうした基盤的な状況への透徹した見方が
どうも霞ヶ関にいるみなさんには、見えていないと思われてならない。
同じ「地域型住宅」というならば、
やはり気候風土に徹底的にこだわった、
「耐候性」というような部分に集約的に目を向けるべきではないのか。
現代で意味がある「地域性」とは、そういうものであると思います。
税金は意味があるように使って欲しい・・・。

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