2日間にわたって北海道の地域住宅「政策」である
北方型住宅2020について紹介してきましたが、
これがきわめてユニークであるポイントには、独自にモデルハウス的な
一般への「見える化」を進めていることも上げられる。
上のビジュアルは札幌から約1時間ほど近郊の「南幌町」で展開する
北方型住宅の理念をカタチにした「きた住まいるビレッジ」の様子。
2018年に全6棟のモデル住宅が建設されて一般に販売され、
おおむね1年以内にそれらは完売し、さらに継続的に事業が推進されている。
地域ビルダーと建築家が協業してユーザーの豊かな暮らしへの
「こだわり」欲求水準に足る家づくりを実現させている。
初期のモデル住宅については北海道地域外、
本州地域からの「移住」の受け皿としての需要で販売が実現した。
地域総体として目指している明確な住宅へのコンセプトとその表現が
住むことへの「こだわり」を持つ移住ユーザーに受け入れられるという
興味深い反応を引き起こしたと言える。
また想像をはるかに超えて、全国の住宅のプロの見学も絶えることがなかった。
この結果は他の北海道内自治体などからも注目されることとなって
同様の企画展開の動きに刺激を与えている。
地方自治体による「住宅施策」という事業の可能性が高まって来ている。
背景としてWEBという広報拡散手段がユーザーに幅広い反応を呼ぶという
社会構造の変化もある。地方のユニークな動きも即座に全国に伝わる。
地域の意欲的な住宅施策は、より広範な注目を集めることが可能だという
これまでは考えにくかったルートがあり得ることをこのチャレンジは示した。
人口減少社会への突入というなかで、地方が生き延びていくために
こうしたこころみは、ある志向性を表現しているといえるのではないか。
考えてみれば、北海道はその起源である「開拓使」の時代から
本州以南地域ニッポンからの「移住」によって人口増加が図られてきた。
自然の豊かさと暮らしの利便性が、札幌という大都会との微妙な距離感で
現代という時代のなかで適度な調和、暮らしの「いごこちのよさ」が実現している。
たしかに冬期は過酷な気候だがそれは住性能向上で安心レベルで克服された。
そのことは北海道が認証するほどのジャストフィットぶりであり、
価格的にも納得できるレベルが確保され、しかも作り手の顔が明確にみえる。
このような「安心価値」に対して距離感を超えた敏感な反応が増えているのかも。
少なくとも、地域としての北海道としてはこうした魅力について
もっと磨きを掛けて、大いにアピールしていくべきではないのだろうか。
北方型住宅は地域総体が注ぎ込んできた創造的エネルギーの結晶でもある。
こういった地域の「戦略的強み」に自覚的になっていく必要があるでしょう。
Posted on 9月 12th, 2020 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 日本社会・文化研究
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