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【日本の美意識の象徴:松花堂弁当】

久しぶりに「お弁当」をいただいた。
わたしは料理大好き男子なので、彩りとかも含めてすばらしい仕事に目がない。
こういう美感演出に、いつも率直に感動させられてしまいます(笑)。

松花堂弁当というのは、たぶん日本独特の食文化ではないかと思う。
懐石とか、京料理とかの美意識が反映されていった末に
プラスチックパッケージも含めて、ジャパンスタンダードを形成したのでしょう。
世界の食文化の中でも、これだけ「目で楽しめる」ものは少ないのではないか。
プラスチックパッケージのマザーは塗りが施された容器だろうから
伝統が現代技術で変容を見せているということで、
そのことも日本文化の対応力の底力を感じさせる。
プラスチックということでの「邪道」感は生活史的にも止揚されている。
よく見ると「視覚」のタテヨコ構成比率はおおむね5:3。
それが全12個の小枠に分割されて構成されている。
この「みた目」が食べる人の心理に与える影響というものも奥行きがありそう。
で、肝心の料理・食材には、そのバラエティの豊かさで感動させられる。
ごはんも通常のお米とモチ米の2種類が使われているけれど、
炊き込みご飯、お寿司系統、おにぎり系統、デザートのおはぎと手が込んでいる。
おかずも、エビチリソース、サケ。お肉も上段右から2つ目の枡に鶏肉料理。
野菜料理も天ぷらのかぼちゃ、きんぴらゴボウ、ニンジン、レンコン、
サヤエンドウ、青物煮浸し、カブの漬物と多彩な食材そろい踏み。
まったく日本人に生まれて良かった感が満載であります(笑)。
よく30品目を1日に食べることが推奨されますが、
これ1食ですでに越えているのではないだろうか?
自分でこれだけの料理をひとりで作るとなると気が遠くなりますが、
食事のバランスとしては、ここまで出来れば最高。
人間のカラダが欲する日本人の自然な食欲欲求を満たすバラエティは、
まさに山海自然に恵まれたこの列島風土の多様さを感じさせられる。

で、本題は「色・カタチのバランス」であります。
ご飯がメインスターとして、円形のデザインでまとめられているので、
その他の食材群も、形態としてはなんとなく円形を意識している。
そういった楽しさも演出しつつ、なんといっても色合いがいい。
料理を作る時、感覚でいちばん動員されるのは「色彩感覚」だと思う。
もちろん素材が持っている色彩を引き出してその素を活かすのが基本。
食材が本来持っている色合いをベースにして、
それらのハーモニーがどうであるか、
色彩的に多様性を演出できているかどうかが、キモだと思う。
栄養素のバランスも、彩りの「ほどよさ」を考えればそれが最適解と言われる。
食材はそれぞれ、その栄養素を「色彩」で伝えているのだ、とされるのですね。
ニンジンが赤いのはそのような意味合いがあるのであって、
白っぽい、緑っぽいなかに赤い色が入れば、栄養的にもバランスが取れるのだという。
けっして人工のあざとさを感じさせない素の風合いの交響楽。
結果として、こういう松花堂弁当では「全体としての」四季感も表現される。
おいしさを封じ込めた缶入りの「お茶」も味わいながら、
いっとき、三昧の世界を楽しませていただきました。ごちそうさまでした。

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