ふたたび新住協・鎌田紀彦先生の講演からの記事です。
あわせて、先日見学していた棟晶さんの新住協モデルハウスの写真。
一見して目を引いていたのがこの外壁の様子。
北海道、札幌で生まれ育ってきた住宅視認経験がわたしの原風景ですが
よく見ていたのは、外壁が下見板張りの木造住宅群でした。
わたしが札幌に引っ越してきて10数年住み続けていた家も
そうした外観デザインの住宅だった。
そうした記憶は、寒さが厳しい住みにくい家のイメージが刷り込まれていました。
無断熱でひたすら石炭暖房で冬を越すという「力任せ」の
越冬型の冬体験の象徴だったように思います。
寒かった、しかし、それが暮らしの原風景と体験であって、
ある部分では無性に恋しいと思えるような住宅デザインでもあった。
その後、モルタル壁に表面仕上げが移行していったのです。
そこに高断熱高気密住宅の革命が起こって
乾式仕上げのサイディングが通気層工法に対して加重の少ない外壁として
一気に普及していったと思います。
そんな状況の中にあって、
建築家・倉本龍彦さんが、通気層工法で下地に防火建材を使って
いわば重厚な外壁構造の面材として、下見板外壁を復活させた。
コストはかかるけれど、再度あのなつかしい下見板張り外観を
北海道の住宅シーンに復元させてくれた思いがした。
今に至るも、倉本さんのデザインへの共感ははるかに持続し続けている。
このことは、北海道の住宅史のなかでも特記されてほしい。
そんな思いを持続させてきて、今回、この鎌田紀彦モデルで
ふたたび、板張りの外観が提起されていたのです。
今度は縦張りで目透かし張り、しかも素材の幅も3種類あるという趣向。
目透かしの間からは輸入の「透湿防水シート」が奥に張られていた。
その内側にはモイスという防耐火の基準を満たす面材が張られている。
コスト的には外壁塗装の積極的なキャンセルなど、抑える工夫が随所に見られる。
そうした構成が、充填断熱・付加断熱層と相まって
寒さから人々を守るシェルターを形作っている。
見学してからもう1カ月近くになっていますが、
やはりジワジワと、この外壁に対しての印象が深くなってきています。
北海道の家は、庭などの植栽演出が積雪の影響から
なかなか難しいこともあわせて考えると、
外壁の素材が他地域と比較しても非常に重要であるように思います。
ひとびとの目に触れる印象で、植栽などの「自然」がないとすれば、
やはり木質の外装が、人々と街並みの印象を和らげてくれるのではないか、
北海道らしい質感のカラマツなら、まさにふさわしいのではないか。
Posted on 4月 23rd, 2019 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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