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【日本建築学会・地球の声「環境住宅」シンポ】


昨日夕、表題のようなシンポジウムが開催されました。
主催者側の川嶋範久・東京工業大学助教からは、以下のような趣旨説明。
〜テーマは、『環境住宅』を「地域性」と「倫理」から再考する。
ゲストスピーカーとして、堀部安嗣氏(堀部安嗣建築設計事務所)、
竹内昌義氏(みかんぐみ)、藤野高志氏(生物建築舎)、末光弘和氏(SUEP.)。
様々な地域(気候風土・文化歴史)において、様々な考え(倫理観)のもと、
「環境」に対する具体的な「実践」をご紹介いただき、それらをベースに
議論する中で、これからの『環境』住宅の多様な可能性を改めて認識し、
これからの建築が向かうべき方向性を炙り出せればと思っております。〜
さらに経緯としては、昨年6月の「新建築住宅特集」で「環境住宅特集」が
特集として組まれたのですが、それに対してわたしも違和感があって、
拙ブログでそれを書いたところ、多くの「反響」があって、
それらをも踏まえて、昨年もシンポジウムが開かれたということだった。
その後、中心メンバーである川島さんは北海道に来られた。
わたしどもが呼びかけて北海道の住宅研究者・設計者などが参集されて
「討論会」を行ったりした。それの「続篇」的なシンポが公開で開かれたのです。
そういった流れもあって、取材としてわたしも参加してみた次第。
本日は速報的概観、感想篇であります。

川島さんからの最初の趣旨説明から昨年のわたしの提起が取り上げられて
一取材者、参加者としては、なかなかアゲンストな状況(笑)。
堀部さんや竹内さんは、いわば断熱原則派的な立ち位置で、
「環境住宅」というコトバについての認識には近縁性が感じられた。
現代が獲得した「断熱技術」を前提にしてそこから目指せる住宅の姿が
その発表を通じて明瞭なイメージとして感覚させられた次第。
北海道的な立場としては、こういった発言者がいるのであれば違和感もないし、
自ら進んで会場内で異を唱える必要性も感じなかった。
ただ、ほかの発表では「環境」というコトバの曖昧さからの
概念の拡散を感じさせられた。どうも概念認識的違いがある。
「自然と繋がる」という「新建築住宅特集・環境住宅特集」の主テーマが
持っている問題点が浮き上がってくるように思われた。
自然と繋がるということは、現代の断熱技術をしっかり使って
そのうえで自然な「理念」として追究されるべきだと思うけれど、
コトバのイメージそのまま、肉体がナマに「自然と繋がる」という志向を感じる。
発表された主張として認識出来た部分には、
夏の暑さ、冬の寒さと「応答する」人間営為を鍛える、
その感覚を研ぎ澄まし感受する無断熱「環境住宅」論すらも語られた。
暑いと感じたら窓を開けるとか、寒い時期には日射を待つ(!)とかの
人間の「環境対応力」を鍛える機縁になるという発言もあった。
印象としては安藤忠雄さんが、冬の寒さは厳しい、生きることは戦いだ、
というように施主さんに言って建てる住宅もまた「環境住宅」になるのか。
言うまでもなく零下20度30度の日本寒冷地の極寒期、いや断熱意識の乏しい
全国の冬期に対して、技術の進化した現代ではあり得ない論議。
シンポジウム終了前にあえて発言させてもらったけれど、
「自然と繋がる」というコトバについて突っ込んだ論議が必要ではないかと。
国の基準として省エネ基準が「義務化」される3年前という直前期。
全国の建築関係者は、この制度条件の中でどのように建築を作っていくか、
方向性を日々必死に模索されていると思うのだけれど、
その今日において、この前提とは違う方向も「環境住宅」論なのだろうか。
「多様性」というコトバにどうも不明なスジを感じた。

という概観でしたが、今後収録した音声データから、
各発表者のコメント内容、進行役の川島氏、全体のコーディネーター的な
塚本由晴氏の発言など、内容をまとめていきたいと思っています。
適時、このブログで情報発信していきたいのですが、
内容的には多岐にわたるので、別に企画する可能性もあります。
さらに来年1月には、北海道の住宅視察と討論会開催などの希望も
企画サイドとしては持たれているようです。
受け入れ側の北海道地域側でも対応を予定しております。
さらにより良い論議が深まっていって欲しいと思います。

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