本文へジャンプ

民家の構造実測作業

写真は岩見沢市栗沢の郊外・農家納屋。
北海道で古民家再生事業に取り組んでいる
武部建設さんの公開実測現場であります。
現地は東南に面したなだらかな斜面にあたり、
まだ寒風の吹く中、実測作業を行っていました。
この建物は昭和30年代前後と推測される建物ですが、
生活していない建物だったようなので、保存状態は比較的良く、
このように構造に還元して、いま、建っている状態での実測を行って
今後の活用に役立てようということだそうです。
北の民家の会、というNPO組織の関係から
札幌市立大学・羽深先生と教え子さんたちも来ていました。

古民家再生の現場って、なかなか見る機会がないし、
また、構造に還元した状態での建物の見学というのもなかなかない。
ちょうどきのうはわが家の近隣でも解体作業を行っている現場もあって
そういう日柄だったようです(笑)。
作業を指揮していた武部建設・武部社長によると
こういう現場を重ねてきていると、
日本の建築というのは雨・水分との戦いが
サスティナビリティの基本であったと知らされると言うこと。
いかに湿気を建物から遠ざけるか、
水分を建物構造に触れさせないか、ということに
先人たちがいかに知恵を重ねてきたのか、ということがわかると言います。
この建物は、主要な部材は製材された材料を使っていますが
基本は4寸柱。そして作業面積を広く確保するために
周辺の山から切り出したであろうと推測される自然木が
梁・横架材として多数、利用されていました。
基礎は束基礎ですが、コンクリート成形材であり、
土中に埋め込んでありました。
その上に、土台が渡されていました。
基礎と土台は緊結されていないので、
建物はその上に乗っかっているだけ、ということになります。
地震などに対しては、その力を逃がすように工夫されている工法です。
構造自体は、柱と梁と、貫と言われる補強が施された工法。
これは、神社の鳥居の真ん中部分の貫通材のようなもので、
柱等の垂直材間に通す水平材のこと。
ということで、いわゆる伝統木工法で建てられています。
いわゆる在来木造工法とは違って、
筋交いというつっかい棒のような部分がない建て方。
先般、この貫による構造耐力実験を見せてもらいましたが、
筋交い入りの建物とは、全然レベルの違う構造耐力がありました。

築後40年以上経過しているようなのですが、
構造材を見る限り水分含有も少なそうで、
土台の一部に劣化が見られる程度です。
しかし、こうした構造還元された状態の建物って
建築というものが基本的に
数学的知恵の集合体であると伝わってくる気がします。
そしてそれは合理性をたたえた美しさが基本であると認識させてくれる。
正直でまっとう、と言いかえてもいいかもしれない。
構造のディテールを見ていると、この建物を建てた人たちの
考えていたことや思いというものが、直接的に感受される。
「あぁ、こうやっていたんだ」って、見えてくる瞬間ですね。
そういう意味では、時空間を簡単に超えて伝わってくる部分がある。
建築の奥行きというものに触れる思いがします。
何回か、ディテール写真を紹介しながら、
そんな部分を追体験できたらと思っています。

北のくらしデザインセンター
NPO住宅クレーム110番|イザというときに役立つ 住まいのQ&A
北海道・東北の住宅雑誌[Replan(リプラン)]|家づくり・住まいの相談・会社選び

コメントを投稿

「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」

You must be logged in to post a comment.