図表は国のZEH関連資料を整理していて抜粋したもの。
アメリカやEUが大きく政策としてカジを切ってきている中で、
日本の政策当局が焦りを募らせてきた背景を知ることができる。
そもそもの「ZEHの定義」を詳細に見ると
それぞれで微妙に異なっていることがわかり、視点の違いもわかる。
とくに欧米間で、対象とする「段階」に違いがある。
アメリカではエネルギー利用の「実績値」が評価基準なのに対して
EUでは日本と同様に設計時の「想定値」としている。
また、家庭内でのエネルギー消費の対象として、
アメリカは暖冷房・換気・給湯・照明・家電・調理と全て対象にしているのに、
EUは暖冷房・換気・給湯・照明で、家電・調理(厨房)は除外されている。
どちらの条件設定でも日本はEU基準の方に近い。
あらためて見てみると、2020年という目標年も
世界共通の年限であることが再確認できる。
ただし、アメリカは2008年に、そしてEUも2013年に基準設定したのに
日本は、2015年と時間的に大きく出遅れ、
いかにも「大急ぎ」で取り組んでいる印象が強い。
しかも欧米では「ZEH READY」、すなわち「創エネ」については
機器のさらなる性能進化を促して、設置を必ずしも必須にしない方向。
欧米では太陽光による「創エネ」は必須でないケースが多いのに
日本ではまず太陽光発電設置ありき、という政策誘導になっている。
こうした施策を受け入れる国民意識でも違いが大きい。
お上というものへの感覚も、欧米と日本では違いが大きいと思う。
日本では江戸という時代が涵養したとされる
国民性としての「従順さ」があるけれど、
欧米は主権在民的民主主義が強固で、個人主義が優勢だと思う。
ただし、民主主義らしく決まったことへの真摯さには強固。
たとえばトランプさんが本当に大統領になったら、
かれの志向性からして、この目標の遵守にどこまで真剣か、
TPPへの対応を見ていると、より個人重視型の政策志向が強まるのでは。
こうして比較してみると、アメリカの「運用時の実績」評価に共感を持つ。
この制度設計であれば実際としてのエネルギー削減の方に真摯であり、
一方の日本では、省エネよりも「創エネ」の方でカバーしようという志向が
どうしても見え隠れしていると言わざるを得ない。
またEUの決定構造は不明だけれど、設計時の想定値評価という基準は、
日本国家の財政制度の「単年度主義」による制約という
側面が強いのではないかと思われる。
アメリカのような「運用時の実績」では、複数年度にわたっての
予算執行が不可欠になる点で、日本には似合わないとされたか。
アメリカは長らく省エネに不熱心とされてきたけれど、
取り組むとなったら、けっこう本気になるモノだと思い知らされる。
など、いろいろな想像を持たされる彼我の相違ですね。
Posted on 8月 1st, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅性能・設備
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