輪島近郊の時国家という目的地に向かったのですが、
しかし、途中の道に点在する里山風景の美しさには圧倒された。
思わず何度もクルマを止めてシャッターを切り続けたけれど、
それが人間が作りだしてきた景観であることを思いつつ、
住宅というものに関わってきて、
これほどに「集住」の美を見せられたことはなかった。
まったくの不勉強で、この地域が
「世界農業遺産」に登録されている事実すら知らなかった。
というより、そういった制度があったことも知らなかった。
そうした権威とか、認定制度とかいうことよりも
まずは圧倒的にすばらしい。
平地面積が少なく、山がちの土地柄の中で、
水利もいい平地を可能な限り農地として利用して
人間の家々は、山裾に寄せて「集村」させ、
しかもその家々が、雪対策からだと思われる、きれいな切妻になっている。
それらが、冬の季節風からお互いを守るかのように微妙に配置され
屋根瓦は、これも落雪させやすいように黒く釉薬を施された瓦で統一されている。
自然と、農業生産と、人間の暮らしのハーモニーが
一個の交響曲のように絶妙にバランスされた美しさ。
まさに息をのむような思いを禁じ得ませんでした。
「北国」としての日本的な暮らしのありようのひとつの典型を見る思い。
広大な農地面積の北海道では
このような土地条件の開拓地は見られなかった。
というよりも、そういった地域よりも開拓しやすい地域が選ばれて
人口集積されていった。
農地が広大であることから、農作事の利便性を考慮して
北海道では「散村」形式が一般的になっていった。
その分、季節風などから家屋を守るというより以上に
家一戸の断熱性を最優先して技術発展してきたのだと思います。
そのような北海道住宅のルポライターの視線には
彼我の相違と、それによって生み出される美感に打たれます。
しかし、このような営み総体として
「世界農業遺産」に登録しようというこの地域のみなさんの発想には
もうひとつ大きな気付きをもたらされる思い。
また、ニッポンの「地方」がプライドをもって次代に生き残っていく
大きな力にもなって行くに違いありません。
こころに残り続ける景観に巡り会えたと感謝しています。
Posted on 6月 19th, 2014 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅取材&ウラ話
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