きのうの続きです。
日本国民としては、被侵略者の気持ちというのはなかなか理解はしにくい。
権力機構が教育していく以外に、こういうものは見えにくいのだろうと思います。
わたしは、昭和30〜40年代に教育を受けた人間ですが、
そこで教えられたのは、アメリカによる占領を経て、
アメリカがこの国に刷り込んだ体制であり、
いわゆる「戦後民主主義」といわれる価値観を植え付けられてきた。
そしてこのことを、日本人は広範に率直に受け入れたのだと思う。
日本人の基本的な認識として、第2次世界大戦において
日本が敗北した相手国は主要にアメリカであって、
北方領土は別にしてそのアメリカによって、日本は一元的に占領支配された。
そして戦後日本は、アメリカの世界戦略に沿って歩み続けた。
ドイツは戦後、東西に分割され、また近隣諸国との関係、
イスラエル、ユダヤ民族に対しての「謝罪」を国家の基本外交姿勢として
一貫して欧州世界で生き続けてきた。
ナチス思想に対しては、それこそ徹底して明確にそれを禁じ、
繰り返し、そのことを近隣諸国、世界に対して宣言し続けてきた。
それに対して日本は、アメリカの世界戦略の中で対共産圏包囲網の
極東におけるもっとも肝要な国家存在として活かされてきた。
そのためにアメリカはこの国家を支配するためのマキアベリズムを発揮した。
天皇制とその周辺的な体制の護持によって、
円滑にこの日本という国家存在を利用することをアメリカは選択してきた。
ドイツではナチスが徹底的に根絶やしになったのに、
日本では、きわめて中途半端にしか、戦前との決別はされなかった。
あまつさえ、A級戦犯とされた人物すら靖国神社では「合祀」されている。
たぶん、韓国や中国との「歴史認識」の違いの最大なるものはこの点だろう。
韓国・中国にしてみれば、日本国家はナチスを否定しないドイツのような国だと
そのように主張したいのだろうと思う。
ドイツの戦前戦後の身の処し方がどうであったか、
それが実質的にどのようなものであったのか、
戦後日本社会ではほとんど興味を持たれることもなく過ごしてきて
いまとなってみても、国民一般レベルでは知る由もない状況にある。
アメリカの世界戦略のなかで戦後日本は大きな役割を果たし続け
またその軍事的な庇護の元で、奇跡的な経済復興を遂げ、
戦後日本社会は経済的繁栄を享受してきた。
そのアメリカ中心の世界体制のなかでは、極東での国家間関係は
基本的な「国家生き残り」に関係するものとも思われなかったのだ。
ドイツは確かに、戦後国際社会で生き延びていくために
自立的な国家生き残り戦略として、ナチスの侵略行為を繰り返し謝罪することでしか
世界のなかでの立ち位置を獲得できなかったのだ。
この違いが、周辺国との関係に大きく影響しているのだと思う。
しかしいまとなっては、
さかのぼって、選択することはできない。
戦後日本はこのような国家体制、国際感覚によって生きてきた実質を持っている。
アメリカは、この極東での国際関係について
自ら積極的に関与しようとは考えてもいないだろうと思う。
多少の痛痒は感じたとしても、それはあくまで日本と韓国・中国との
2国間関係にしか過ぎない、という立場だろうと思う。
相次いで惹起した島嶼の領有権問題へのアメリカの対応を見れば、
このことは明白だと思う。
さて日本はどうしていくべきなのか。
一番考えられる事態は、
ドイツのように振る舞えと声高に中韓両国は声を上げ続け、
徐々に日本国内には、この2カ国への反感感情が膨らんでいって
ある飽和点を超える可能性がありえる。
そのときにどういった方向に日本が向かうのかは
今回の民主党政権の極端な敗北や、ネオ右翼的な
「維新の会」などの勢力伸長を見れば、おぼろげに見えてくる。
まぁしかし、いまのところは日本の世論は冷静さを持っている範囲内だと思う。
そういったネオ右翼的な方向性に対しては、
たぶん、アメリカが日本国内の世論操作に乗り出す可能性も高い。
反対に、韓国・中国が要求するようなドイツ的な周辺国への対応が
日本として可能なのかどうか、これはハッキリ難しいだろうと思われる。
アメリカにしても、自らが主導した戦後日本の国家のありよう全般について
根本的な変更を加えるのは、アメリカの国益にも影響する可能性がある。
当面は、日本側に冷静な対応を求め続けるくらいしかないのではないか。
そして中国に対しては長い冷戦時代の日本の習慣的な外交姿勢
「対米従属」「アメリカ軍事力の脅威」が効果を発揮するけれど、
逆に米国同盟国家・韓国にはそれが効果を発揮しない。
そして韓国はそれなりに戦略的に、アメリカが戦後世界で使ってきた
「人権」というファクターを使って、アメリカに同意を迫る手段を使っている。
そういった悩ましい国際関係にいまの日本は置かれていると思う。
そして日本国内には、このような方向性を持った議論はあまり存在しない。
韓国に対して、あくまでも対話努力を継続するしか
いまのところはないだろうと思われます。
確かに戦後処理の仕方に置いて、ドイツのようにはしてはいないけれど、
そのことはアメリカの戦略的な、とは言いにくいだろうけれど、
戦勝国側の意図した、とでも言い換えて世界に
戦後日本の立場を明確に説明し、訴えていくしかないのではないか。
ただし、日本の外交姿勢はそのように訴求できるかどうか、
これもまた、きわめて疑わしい。
戦後日本がはじめて経験するような難しさに満ちた外交テーマだと思う。
Posted on 11月 8th, 2013 by 三木 奎吾
Filed under: 状況・政治への発言
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