本文へジャンプ

北東アジア論_2

map.gif
中国の温家宝首相が来日し、国会で演説した。
中国という国の政体については、いろいろと論議にあるところ。
ああいう独裁国家の指導者を仮にも民主国家の最高機関で演説させるのはどうか、
というような声が、中国の反体制派から出ているということだそうだ。
しかし、天安門事件という衝撃があって、
中国共産党指導部も、ずいぶん変わってきているのは疑いはない。
それに対して、世界の政治舞台では、冷静に対応しているというのがリアルなところ。
実際、中国という国の歴史を見てくれば、
あの国で、民主的なプロセスでの国家運営というものが
可能かどうか、は確かに難しいとも思える。
曲がりなりにも、あの膨大な人口を食わせていく政権、というのは
現実的に、ああいう政治体制もありなのかとも思う。
人口10億にもなる単一国家であって、民主主義的な国家運営を行っている、
という政体は、先進国家にはない。
いま、中国は少なくとも「開発独裁」型の政治体制が似合っている段階でもあり、
その意味では、戦後の自民党と中央官僚組織というヒエラルキーが
中国がもっとも参考にしている政体であることは自明。
日本には、そういう体制で、野党という存在があったけれど、
現在の中国では、そういう存在がない、というところ。
歴史的に、中国は、それ自体、多様な民族を含んでいる連邦型国家であり
強大な独裁しか、国家をまとめ上げていくのは不可能なのかも知れない。
何度か、あの国では、いくつかの小国家に分立していた時期があったけれど、
それでは、安定しないのも事実だと思う。
結局は多くの内戦が発生して、民衆の大量死が不可避。
そう考えれば、ある程度、独裁型の権力体制が必要だとも考えられる。
中国という社会が安定するのは、そうした側面が避けられないのはないか。
そういう内政的な部分が中国指導層の大きな関心事なので、
あまり排外的な姿勢は取ったことがない。
これは朝鮮の外交姿勢も預かっているのだとは思えるけれど、
歴史的には、中国は陸続きの朝鮮全部を併合するまでは、したことがない。
日本に対しては一度、派兵してきたことがある。
元寇だけれど、これも中国民族というよりはモンゴル系の
遊牧民族による王朝であった、という側面が大きいと思う。
ただし、この元寇の体験は、日本民族に計り知れない恐怖心を植え付けただろうと思う。
中国というのは、北東アジア世界では
まさに「中華」であって、世界の中心であり続けてきた歴史。
すくなくとも彼ら自身は、そういう意識を強烈に持っていることは理解しなければならない。
日本は、明治以来「脱亜入欧」というのが基本スタンスであり、
対アジアへの、排外主義というのが芽生えやすい土壌を培ってきた。
中国や朝鮮に対する敬意のない民衆感情を、意図的に為政者たちは扇動してきた。
在日のかれらへの偏見や差別は事実として存在し続ける。
21世紀の今日、こういう基本的な部分から
日本人は変わっていかなければならないと思う。
これがなかなか進まず、むしろ、若い世代にすら、嫌中、嫌韓、嫌朝、といった
歴史をまったく理解していないおかしな風潮がはびこっている。
正しい国際関係を構築していくためにも、
日本社会の国際化、アジア理解の促進が必要だと思う。
難しいけれど、まずは、アジアの中で、正常な国家関係の基盤を構築しなければならない。

コメントを投稿

「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」

You must be logged in to post a comment.