最近、沖縄では木造住宅がブームになっているようです。
その作り手は基本的には本州から参入してきた大手パワービルダーであり、
そうしたかれらは基本仕様として断熱などは行っている。
一方で、基本的にはこの地域では断熱はいらないと国の基準ではなっていて、
きのう聞いた情報では2020年に向けても
この状況は変わらない方向であるとされていた。
そのような条件下で、県外大手ビルダーの市場席巻が起こっていて、
ユーザー側でも、ふつうに断熱した住宅の良さが伝わってきているようです。
寒冷地の人間からすると、よくわからない逆立ちしたような状況。
地域ビルダーが断熱に背を向けているのに対して
普通の感覚により近い規格大量生産派が受けている。
なぜ断熱をそこまで毛嫌いするのか、
反断熱の守旧派というような構図に思われてならない。
まぁそうはいっても、こちらはエトランゼであり、
それぞれの考え方のありようについては関与のしようもないし、
というように考え、その暮らし文化のエッセンスだけを理解したいと接してきた。
今回のPVソーラーハウス協会さんの沖縄総会では、
そうした立場から一歩踏み出して、具体的住環境論が交わされて、
たいへん興味深い展開になっていました。
PVソーラーハウス協会では沖縄の住環境革新のために立ち上がった
数社の地域ビルダーさんと協働して、長期的取り組みを行ってきている。
その結果、本州地域、場合によっては北海道の標準的断熱仕様と
大差のない住宅建築も実験的に行われ、その住宅も見学してきた。
おだやかな温度空気吹き出しによる全館エアコン連続冷房で、
こうした断熱空間はいごこちのよい住環境が実現されていた。
今回の視察、研修を経て、温暖地域・蒸暑地域についての
市場動向、ユーザーのホンネ認識、生活伝統文化など、
いろいろな側面からの多角的な情報を得ることができました。
寒冷地だけでなく総体としての住環境認識について
さまざまに気付く機会を得たと思っています。
徐々にこの情報を整理して、まとめていきたいと思います。
写真はそういう気付きの一つで、
沖縄を代表する、地域の生活文化認識といえる「中村家住宅」の写真。
一番上は、講演された東大・前真之准教授による温熱環境検証画像と
「一番座」からみた参加者の様子であります。
この一番座に座っていると、いつも蒸暑の空気が一定に「そよ風」のような
空気流動をこちらの身体に伝えてくれると思います。
その空気感が、前先生の熱画像からも伝わってくる。
琉球石灰石の敷き詰められた高温空間から「雨はじ」といわれる縁側空間、
さらに室内へと温度の段階が分かれている。
こういうグラデーションが比較的高温のなかでも存在している。
温度差の中で発生する微風がカラダをなでる、このいごこちのなかにいると、
「室内にあって、そよ風がいとおしいと感じられるいごこち」が、
日本人にとって原初的な空間的快楽性の基本であるのではと思わされる。
前先生の人間温熱感解析でも、人間は発汗という調節機能を進化させた特殊動物、
というように言われていて、沖縄のような蒸暑気候のなかでも
このような温熱感体験をむしろ快楽的に受容していることに気付くのです。
「あっついね」と言いながら表情は笑っているというのは、人間は本来
暑さには対応する発汗機能を充実させている、という余裕からなのかも知れない。
わたしのような寒冷地の人間でも、沖縄に来たら、
「やったぜ、人間本来の機能を発揮できるチャンスだ!」というようにカラダは
実は歓喜しているといえるのでしょうね。まぁだから沖縄には来たくなる(笑)。
断熱をきちんとやって得られる室内環境のここちよさと、
この人間本来の発汗機能発揮的いごこち感というのは、
どうも話が平行四辺形的な議論だというように、気付いてきた次第です。
ただし、人体的特性と建築とは同じレベルでは論じられない。
そのあたりから、対話は噛み合っていくのではないでしょうか?
Posted on 6月 29th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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