北の民家の会というNPO組織がありまして、
札幌市立大学・羽深教授や武部建設・武部社長のネットワークで
北海道の古民家文化の発掘・活用・拡散の活動を続けています。
きのうはその例会と講演会として、東京から松井郁夫さんが来られました。
松井さんの講演は数回聴講させていただいた経験がありますが、
たいへんな進化を遂げられていて、刮目する思いで聞いておりました。
よく「男子三日会わざれば刮目して見よ」と言いますが、
まことに言い得ているなぁと感じておりました。
あ、松井さんは国の政策などにも影響力を持たれているほどの方なので
こういう言い方は大変僭越だとは思いますが、正直にそう感じていた次第。
松井さんはご存知のように伝統工法を現代に活かす活動を
「き」組の活動として実践されている方です。
日本に根付いて存続してきた「民家」の作りようの系譜を大工職人の技能として
着目して、その技術を聞き取りのようなカタチでまとめ上げられていった。
「口伝」で継承されてきたものをわかりやすいカタチにしたその功績は
民族のひとつの大きな「資産」の再発掘のような事跡だと思っています。
で、個人的知遇を得ていない時期からはるかにリスペクトしていたのですが、
たまたま東日本大震災のあとの復興支援の活動の中で
「き」組の提案に興味を持って、上京機会時に「取材」に訪れた。
わたしとしては初対面でもあり、失礼な物言いをした記憶はないのですが(笑)
きのうの再会後の懇親会では、その取材時にわたしが
「伝統工法はなぜ断熱気密を無視するのか」と
松井さんに強烈に「食ってかかってきた」と大笑されていた。
隣に座らされたので怨念の籠もったヘッドロックも強烈でした(笑)。
で、そのことを強く記憶されていて、その後わたしが北海道の断熱技術の
見学機会をご案内したところ、即決で参加を決められ、
その機会を嚆矢として北海道の建築技術者のみなさんと
大いに技術交流を重ねられてきたということ。
2枚目写真のように山本亜耕さんともfacebook交流が活発とのこと。
あ、このふたりはきのうがリアルの初対面ということでした(笑)。
net利用でリアル対面以上の「濃い」関係つくりがいまや可能ですね。
そういう活動で、いまではコテコテの伝統工法「保守派」サイドの一部から
「松井は伝統工法に断熱気密などの不浄な要素を持ち込んできた」
というように名指しされたりしているということ。
しかし「伝統は常に革新することで伝統たり得る」という
まことにまっとうな強い信念を持たれて伝統工法の高断熱化を進められている。
講演では、いま進められている滋賀県の改修物件の紹介がありましたが、
こちらではなんと共通の知人が施工を請け負っているということでした。
日本の建築技術の輪の広がりは深く大きくなって来ているようです。
北の民家が必然的にたどった高断熱進化を、日本の民家伝統が
それを大きく受け止めて、さらなる前進に活かそうとされている。
伝統工法のさらなる進化としてこうした活動を進められていることは、
まことに深く共感させられ、うれしく感じるところです。
きのうの講演、さらにその後の懇親会では、
北海道足寄で「き」組の家に取り組み、伝統工法の象徴「貫」を使った家づくりを
高断熱高気密で施工しているという方とも知遇を得ました。
「高断熱 meets 日本伝統民家」という動きが双方で大きく胎動してきています。
Posted on 6月 17th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 古民家シリーズ
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