北海道ではいわゆる建築家の住宅性能への関心度、
そういった技術への理解、咀嚼度が他地域とは格段の違いがある。
アルミサッシ全盛の時代に、開口部の性能向上とデザイン性向上のため
いちはやく「木製3重ガラス入り」を積極的に採用したのが、建築家たちだった。
自らのデザインに大きな飛躍力を持たせるために、
むしろ住宅性能に対して先導的に対応してきたと言えます。
わたしが雑誌を創刊し「いい家」をふつうに考えたとき、こうした動きは
きわめてわかりやすい流れだと思ったものでした。
そう考えたとき、比較的に「バリア」があった工務店と建築家の垣根を
意識的に取り外していきたいとも考えた次第です。
誌面では積極的にそうした動きを掲載し、読者ユーザーに「垣根」感を
払拭させるように意図的に仕掛けていたともいえます。
建築家という存在を一般化して工務店もデザイン力を向上させていった。
きのうご紹介した山之内裕一さんは60代の設計者。
それに対して若い世代のユニークな設計者たちもどんどん育ってきている。
いろいろな感受性がのびのびと表現を切り開いていくことは素晴らしい。
こちらの住宅設計の大杉崇さんはいまや北海道でも中軸的な建築家。
昨年の建築作品発表会でも、いい作品を発表されていた。
わたしもこのブログでも何度か、住宅をご紹介しています。
施工のアクト工房・松澤さんとは今回のコラボが初めてだったようですが、
作られる住宅には両者にある通底する部分があると思っています。
ただし、今回のプロジェクトでは相当に激論を交わしながら
作ってきたというような情報を受けておりました(笑)。
そういう意味でも見学が楽しみだった住宅です。コンセプトは、
●都会の脇でお洒落に暮らすGlamping-House 「Inside-Out」
新省エネ基準に向けた超高性能コンパクトハウス。全天候型の
半屋外ガレージテラスを中心として、リビングに居ながら
グランピング気分を味わえる斬新な提案〜というもの。
北海道の住宅というと、窓が小さくてひたすら防御的なイメージというのを
本州地域のひとから言われることがありますが、
むしろ北海道人はもっとも自然環境が豊かな風土の中で、
冬の寒さについては、ダウンジャケットなどで衣類についてもほぼ克服した。
そして住宅についても住宅性能を向上させて家の中は全国一暖かい。
基本的に雪質もドライなので、冬の暮らし方も重く堪え忍ぶ感覚は少ない。
また、夏場の自然の豊かさは語る必要もないほどなので、
自然環境に対して基本的には能動的な生活態度があると思います。
この住宅ではそういったイマドキの北海道暮らしのありようが伝わってくる。
「おお、きょうはすごいブリザードだな。すげーきれいだわ」みたいな
家の中の気候環境が四季を通して安定することで、
外の自然に対してアクティブな感覚を持つことが可能になっていると思います。
キビシイ冬の気候も含めてそれを楽しむライフスタイル。
むしろこういったライフスタイル提案の中身の方が
イマドキの北海道では住宅づくりの最大関心事になって来ている。
喜ばしい「当たり前化」だと思われます。
本州地域での住宅性能向上への関心の高まりは大変喜ばしいことですが、
いま北海道は住宅性能の向上の先で、こういったライフスタイルへの
興味関心が強くなってきているのではないかと思っています。
内部環境の高性能住宅が実現することで、自ずと住み手の関心は
より楽しい生き方の方向に向かって、開放されていくのではないでしょうか?
Posted on 6月 8th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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