写真は、以前に見学した川越の商家内部。
大沢家住宅という建物なんですが、
ちょうどご主人もいたので、いろいろ建物の内部を説明していただいた中で
いわゆる「下屋」の意味について学ばせてもらったのです。
日本では、「町」というものは「通り」の周囲に形成されたもの。
ひとの通りであるとか、
区画同士の結界としての分岐筋というようなものに沿って
賑わいが形成され、おのずと商家が成立し、
「町家」というような建築形式が成立していった。
現代の住宅って、こういう町家建築を基本にして、
農家住宅の諸機能一体性をプラスした住居形式ではないかと思っています。
現代以前の歴史的住宅のなかで、
現代住宅にもっとも近しいのがこういう町家だと思うのです。
で、こういった町家から、いろいろな知恵を学ぶことが
もっと必要なのではないかと考えているのです。
町家は集合的な住宅であり、
コミュニケーション機能、通常は商売の場として
来客との交流を重視した建築様式。
この写真では、主屋と「下屋」のつながり部分を撮影しました。
下屋って、基本的には主屋の長期延命性重視に対して、
むしろそれを守るような、傷みやすい部分を保護し、
より簡易に建て替えられるように配慮しているもの。
ここではこの下屋の軒先部分の距離が2mくらい配置されていました。
写真ではその中間部分に引き戸の建具が装置されています。
このくらいのセットバック距離が計算されていると、
内部の土間、ちょうど石で結界が示されている左側ですが、
そっち側まで、雨が吹き込むということがないのだそうです。
横殴りの年に数回の大雨でも、その被害から建物を守っている。
そのような中間的領域、いわばバッファーゾーンとして
下屋は構想され、デザインされていたということなのです。
この大沢家住宅では、その上、下屋天井の垂木にまで漆喰塗装され、
反射率の高い光の拡散作用を利用しています。
内部は一転して、暗く落ち着いた空間になっていて
商家としての機能性をみごとに空間デザインしています。
その上、下屋に掛けられた屋根庇が長く伸びて
内部に陳列していた呉服などの高額商品を日焼けから保護していた。
まぁ、2mのセットバック距離って、
足下も、おおむね内部土間をドロドロにはさせないでしょうね。
長期優良な家づくりというのは、
ごく当たり前に、こういう工夫を行っているものだと理解されますね。
北のくらしデザインセンター
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Posted on 3月 26th, 2010 by replanmin
Filed under: 住宅性能・設備
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