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金沢21世紀美術館〜透明な壁のいごこち

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写真は、さすがに北海道ではお目にかかることがない
SANAA(妹島和世さんと西沢立衛さんによる日本の建築家ユニット)の
「金沢21世紀美術館」であります。
ことし、はじめて見る機会を作って行ってきた次第です。
さすがにこのユニットの建築は、どちらかというと温暖地に建てられていて
寒冷地では実現しないのではないかと思います。
まぁ十和田にはあるのですが・・・。
これは公共建築であり、
地域のひとびとの同意があるのであれば、省エネという観点ばかりが
主要な建築評価基準である必要はないだろうとは思います。
ドイツパッシブハウスでも開放的な開口部が
自然に求められているように、洋の東西を問わず
このようなデザインがある普遍的な欲求を表現していることは間違いがない。
こうしたデザインの成立は、周辺環境にもよるでしょうが、
この金沢の立地の場合には、市の中心地の緑地のなかにあり、
十分な視覚的ここちよさを、訪れるみなさんに提供していると思われます。
わたしには構造のことはあんまりわかりませんが、
RC造でここまで外壁の量が少ない建築が成立する驚きが大きい。
まるで外にいるかのような透明な壁が外界と内側を仕切っているけれど
その仕切のガラスはきれいな湾曲を見せていて、
その厚み仕様はどうであるかは確認していませんが、
ペアガラスでもないことは容易に知れる。
訪れた時期は5月下旬だったのですが、ガラス面の床端部には
巨大であろう空調設備による冷房風がガラス面に吹き上げられていました。
この建築での人間の皮膚感覚的体感の「いごこち」は、
もっぱら設備が担わされることになっている。
地元の建築家からも「いつまで持つか」という議論もあると聞く。

結局、ガラスで壁を作ったことによって増幅される室内側の寒暑条件は、
力づくの冷暖房コストの注入で「解決」させるしかありえない。
わたし自身未確認ながら、この美術館の年間冷暖房光熱費の開示はされていない、
という、ある信頼できる方からの情報もあります。
さらにメーカーの保障も取れない「シール」つまりコーキング接着材を頼りにする
「ガラス接合建築」のメンテナンス費用は今後、大きな問題にもなり得る。
第一、エネルギー危機が進行していって維持コストが巨大になっていったとき
そのコスト負担に将来社会がほんとうに納得するのかどうか?
・・・しかし今のところ、訪れるひとは多く、
口コミ的な評判は概して好意的なものが多いようです。
ある空間概念イメージに挑戦的に取り組むことは
建築の、あるいは人間環境の進歩発展にとって意味は大きいでしょう。
しかし建築はどんどんダウンサイジングされていって、
そういう「挑戦的な建築」であっても、日本中どこにでも建てられていく。
そうだとしたら、こういう建築が
最小限度に近いメンテナンスで延命していけるような具体的な手法を、
そこに建てた人間の「責任」として考え出す必要は
あるのではないだろうか。
美しさを感じながら、同時にそういったあやうさを受け取っていた次第です。
美しければそれでいいのだろうか?

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