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素地表しの空間

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内装を仕上げるときにいちばん一般的なのは、
断熱材の充填された壁を隠すように張る耐火プラスターボードの上から、
白っぽいビニールクロスで仕上げるというもの。
なぜ、白っぽいのかというと、外部からの光が
室内に均一に満ちて、明るい空間ができるということが大きい。
多少、クロスの柄くらいを工夫する、のがせいぜい。
でもまぁ、そういう空間って見慣れてくると単調でつまらなくなってくる。
そんなことと、木造で作る場合、外張り断熱を採用すると
ごらんの写真のような「合板仕上げ」の空間ができる。
合板はそのまま見せるようなきれいな仕上げ材ではないけれど、
このうえからわざわざコストをかけてボードを張って
クロス仕上げをする必要はない、と考えれば
このまんま、ハイ仕上げです。という作戦も出てくる。
それと、構造材も正直にそのまま露出させているので、
メンテナンス的にも、明快になっているので、不具合が出たときにも対応しやすい。
メリットを上げると色々出てくるのだけれど、
やっぱり、「え、これでお終いなの?」という感じ方も根強い。
いまの社会の中での反応で言えば、2割くらいが容認派で、
8割くらいが「オイ、ちゃんと仕上げろよ」という否定派、でしょうか。
かくいうわたしも事務所ではこういう素地表しの意匠を採用しています。
事務所では、このほかに「簡単に壁面に大量の本棚を安く造作できる」という
メリットが大きくて採用したわけですが、
機能的なシンプルさと、これでいいや、と思い切っている清々しさが感じられるようです。
合板には当然ですが、木の節がそのままでています。
無節の合板って言うのはありません。
なので、仕上げ材に節のあるものを使うのは変だ、という考えもありますね。
こういう考えって、たぶん、普請・建築というものが
お金持ち階級だけの特権的なことであった時代のなごりのような考えだと思います。
戦前までの社会では、一般庶民は賃貸住宅に住むのが、都市では当然。
なので、庶民向けの建て方とは別に、お旦那様向けの本格的建て方、
というものが存在し、そこでは仕上げ材に節のある材料などは許されなかったのでしょう。
また、壁は塗り壁で仕上げるのがふつうであり、
場合によってはしっくいなどの本格的な仕上げも行われていた。
そういう意味では、「平滑さ」というのが基準的な考え方だったかも知れないですね。
そういうことに価値観を見いだしていた。
そういう生活文化の状態から、一気に住宅金融公庫借入による
一般庶民の「持ち家」という生活文化に移行した。
そのために、高嶺の花的にそうした考え方が広がっていった、と言えるのではないでしょうか。
ただし、大量生産社会なので簡便で、表面的に同等の効果のある、ように見える
ビニールクロス仕上げというのが、標準の位置を獲得した。
たぶん、後世の人たちから見ると、20世紀後半から
日本の住宅が大きく変化したというように語ることになると思われます。
こういう状況の中で、建材も変化してきている。
合板などというものも、建材の大量生産化の過程で生み出されてきたもの。
そういう意味で、この写真のようなスタイルも
ごく最近の社会経済的な変化を敏感に反映させた空間性だと言えるのですね。
まぁ、こういう変化の中で生み出された中から、
今日的なインテリアスタイル、というものが定まっていくものなのだと感じます。
さてどのように変わっていくのでしょうか?
興味は尽きない部分ですね。

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