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東大・松村秀一先生講演〜弱まる「個人」

きのう、北総研が所属している「道総研」のセミナーがありました。
道総研は、機構改革の結果、北海道が作ってきたいろいろな研究組織を統合して
たとえば農業部門から、森林管理部門や建築研究まで、
さまざまな研究組織を網羅的にひとつの組織にまとめ上げたもの。
そのはじめの経緯はたぶん、知事の発案に基づく再編だったのでしょう。
その組織にしてみたら、まったく畑違いの組織同士がくっつくことなので、
いろいろな予測できない問題点も浮かび上がってこざるを得ない。
そういったなかで、せっかく出来たのだから、
組織目標として、「地域」戦略研究のようなテーマは必然的に出てくる。
そのような構想の一環として、
森林経営の問題と、住宅の問題とを合わせて考えるというのが
今回のセミナーの基本的なテーマでした。
まぁ、このあたりは専門外の部分なので、よくわかりません。

で、基調講演者として、
東大工学部の松村秀一先生の名前が見つかって、これは、
ということで駆けつけさせていただいた次第です。
先生には、数年前、雑誌としての対談企画で大変お世話になり、
はじめて「東大に入る」経験をさせていただいた恩義がある(笑)。
ってまぁ、笑いネタにしては失礼なのですが、
講演後、ご挨拶も出来まして、いい機会として利用させていただけました。
先生とお会いしてお話を伺ってから、
工学部、というのは実に広範な領域にまたがった学問領域なのだと
まざまざと思い知らされた経験があります。
先生のホームグラウンドは、建築工法とか生産システムなのですが、
非常に幅広い知見を持たれていて、
いつも目の覚めるような思いをさせられます。
きのうも、本題としては林業経営と住宅産業の連携がテーマだったのですが、
むしろ、より本質的な人類史的ななかでのいまの建築の立ち位置という
壮大な切り口からの講演を聞かせていただいて、
またまた、ハッと目の覚めるような思いがいたしました。
ハコの産業から、場の産業へ、
という明解な、住宅産業の目指すべき方向性への簡潔なテーマ明示。
主要な発言はそういったものだったように思います。
戦前社会までの「家父長制」下での家父長をイメージした個人と、
現代社会の小市民的で、個別分散的ななかでの「個人」との明瞭な違いが
住宅建築の世界でも、大きな価値変動をもたらすのではないか、
というようなあたりは、先生の建築ゼネラリストとしての
本領発揮の部分だと、深く納得させられました。
家の存続、ということが最優先された時代の判断主体として個人と、
いま、地縁血縁とは距離があり、また会社との縁も希薄化し、
地域社会との絆も弱い時代の個人は、
主体性において、きわめて存在のアイデンティティが弱まってきている。
この「弱い個人」という言葉自体は、
京都在住のフランス文学者・西川 祐子さんの発言だといわれていましたが、
あるすじみちが見えてくるような内容だったと思います。
多くの示唆に富んでいて、たいへん多くを学ばせていただいた次第。
これからいろいろ思索を巡らせていくたくさんのテーマがありました。
あぁ、もっと勉強しておくべきだった・・・(笑)。

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