トイレという空間は、それが室内に完全に取り込まれるようになったのは
一般的日本人の家屋としては新しい。
江戸期までの庶民の長屋などでは「厠」は外部にしつらえられるのが一般的。
世界に冠たる循環資源回収システムによって農家の肥料として
回収されていくエコ生態系の起点になった存在。
そう考えると、水洗が前提で臭気などを気にしないで
室内に取り込まれたいまの形態の時間経緯はそれほど長くない。
世代で考えてもたかだか、2−3世代くらいの「生活文化」蓄積もない。
この水洗システムは近代的な「衛生思想」の根幹を成している。
これが巨大な水瓶、上下水道システムを完備した「都市環境」の起点。
で、このように室内にトイレが衛生的に取り込まれてくると
そのインテリアデザイン感覚もまた必然的に進化をはじめる。
しかしそうはいっても、あくまでも究極的な「個室」。
家族とは言っても大人数でのコミュニケーションの場ではない。
個室環境、それも個人的体験のための空間。
写真は岩手県のビルダー「D-LIFE」の完成見学会で発見の「瞑想トイレ」。
そうか、こういう手があったか、と微笑ましく感じる。
真っ黒な壁紙空間で、奥の窓からは光が入ってくるけれど、
まるで宇宙のなかに太陽が燦々と輝いている状況。
一方夜になれば、小さな光源のなか、まるで漆黒の宇宙にたたずむ。
真っ黒と思っていたのは錯覚で、ところどころにご丁寧に
「星雲」が浮かんでいるではありませんか。
アンドロメダか、はたまた銀河系か?
で、よくよくみるとほのかに壁紙の貼り合わせ箇所にも気付くことができる。
しかしふつうの壁紙であればありえないほどの「施工の注意力」が必要。
見た感じでは、アンドロメダ・銀河系の星々の細部まできちんと連続している。
おお、であります。
やはりこういうディテールのこだわりには拍手したくなる(笑)。
これでこその「宇宙体験」だろうと。
こういう壁紙ではどういうマーキングと手順が用意されているのか、
不勉強であんまり知らなかったのですが、
きっと綿密に作業手順と製品の側で周到に考えられているのでしょうね。
究極的「個空間」としてのトイレデザインの可能性。
オモシロい展開が今後ともありそうだと、腑に落ちた次第であります。
Posted on 3月 25th, 2019 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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