先日の日本建築学会北海道の「建築作品発表会」での発表作品。
「神社山の隠れ鳥居の家」というネームがつけられていた。
敷地は、北海道神宮所有の「神社山」裾野に建てられていて、
その山からの「土砂災害危険性」に対応することが求められている。
一般的には「擁壁を建てる」か、
「道路面以外の1階部分を窓のないRC造に」しなければならない。
設計者・日野桂子さんは、構造設計者・山脇克彦氏と協働して
「土砂を受け止めるのではなく、建物の下を流す」設計で対応した。
RCの4本の柱と梁で支えられて、独特のデザインが可能になっている。
構造設計の山脇さんは、東京での大手建設会社勤務を経て
近年札幌に移住されて、その技術を活かして、
北海道の意匠設計者と協働することが増えている方。
今回の発表会では、すでに発表した2件、
「掘っ立て柱の家」や「le pont」などの作品で協働しています。
地域の建築が活性化していくためには、さまざまな知見と技術が
豊かに力を合わせさらに熟成されていかなければならない。
そういった意味では、既存の「断熱気密」技術蓄積に加えて、
このような「構造設計技術」が強化されていくことは、たいへん喜ばしい。
とくに多くの自然が残された北海道の住宅地域環境を考えたら、
その景観を危険要素とみるか、
そうではなく親和的な対応で、よりパッシブに受け流していくかの違いで
残されていく建築のデザインが大きく変わっていくと思われる。
ユーザー側からすれば、このような建築の進化はまことに喜ばしい。
よりいごこちよく、またより「強い」建築が可能になってくる。
わたしたちの住まいへの発想が、より自由に広がる可能性が高い。
この住宅建築では、下の写真のような構造架構が現出し、
そのことがまた、建築デザインに対しても大きなインスピレーションを与えた。
神社山に対して架構が鳥居のように建てられたことが、
この建築の彩りにとって、決定的な印象を与えていると思う。
構造と断熱気密とは意匠設計にとって「制約条件」になるものではなく、
むしろ大きく革新していく要素なのではないか。
期せずして断熱気密に対しての温暖地の設計者、
堀部安嗣さんや竹内昌義さんの意見でも、このような志向性が感じられた。
いわく「家中に寒い場所がなくなる設計的な自由の獲得」という視点。
寒冷地北海道の設計者たちは、断熱気密という技術を
当然の前提条件としてフル活用した上で、さらにこのような構造技術も
最先端的に受容を始めているように感じられる。
この地での住宅建築が、より豊かになっていくことを希望します。
Posted on 12月 10th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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