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【断熱が視覚的デザインになった家 建築発表会-2】



「わたし鎌田先生の授業では劣等生でした(笑)」と屈託のない
笑顔が印象的な設計者の青木弘司さん。
室蘭工大出身の設計者の発表が多かったように感じたのだけれど、
そのなかでも清々しいまでのチャレンジをしていたのが、この住宅作品。
いまの若い設計者は、頼まれやすい同年代の若い人はコスト的に厳しい環境にあって、
設計を依頼される場合でも、中古住宅のリノベが圧倒的に多いという。
本当は既存住宅に手を入れて改修するというのは、
ベテランのほうがふさわしいとも思えるけれど、それ以上に
年代的な「生活価値感」の共有という要因があって、
若い彼らはそういった制約条件の中で、いろいろなチャレンジを試みている。

この住宅の場合は、そんな同年代では珍しくまったくの更地に新築するケース。
伊達市なので、戸あたりの面積は100坪と大きめだったという。
しかし住宅としてはそんなに敷地がいるワケではないし、
残余のスペースを庭造りするという「リアリティを見いだせない」という。
ミニマリズム志向が強い若い人たちにとって、
そのように感じられるのだという気付きも得られたけれど、
この住宅の場合、施主さんと建築の側のこの共有感覚が出発点になっている。
庭造りを楽しむというような趣味はないし冬の間ムダに広い敷地に雪が積もったら
その処理に明け暮れるだけしか考えられない。
だとすれば、大きなボックス空間を確保して雪に対処する面積を小さくしたい。
・・・聞いていて、清々しいほどの割り切りぶりに微笑んでしまう。
必ずしも、自然が豊かで空地がたっぷりあるだけがシアワセではない、
自分たちの生活信条に寄り添ったコンパクトでミニマムな暮らしがしたい。
これからの人口減少時代の人間コロニーはどうあるべきなのか、
ある「異議申し立て」のようにも感じられた。
で、そうした動機に即して建築計画を考えていって、
敷地の大きさに見合った鉄骨造の建物を建て、
その内側に木造の建物を建てるという「入れ子」案を採用した。
この2つの機能を異にするボックスは「断熱層」を引き剥がしたようなイメージ。
中間に生ずる空間は言ってみれば「空気層」が巨大化した空間。
外皮側のボックスは風雨をしのぐ無断熱の建物で
内側の建物では断熱材がそのまま表側に表れている。
もちろん、気密層はその断熱材の内側で処理される。
結果、これまで見たこともないような空間が獲得された。
でも考えてみれば北海道の断熱技術のパイオニア・北大名誉教授・荒谷登先生が
授業で話されたとされる「地球は空気で外断熱されている」
というイメージに直接的な空間的答になっているようにも思う。

発表会では、この外皮側ボックスでの結露と、
逆に夏場の日射取得での高温状態への危惧が当然のように出ていた。
とくに自宅でガラスボックス的「外皮」を作り20年以上の経過を
過ごしているTAU設計・藤島さんからは経験に踏まえた意見も出ていた。
しかし断熱技術は意匠的意味合いが表出しにくい現実の中で、
果敢にまったく新しい空間創造にチャレンジする姿勢は、好感を持った。
このように現出した「空気層」空間について温熱環境コントロール技術を
獲得していったら、住宅デザインの可能性も大きく拡大するのではないか。
いわば議論が沸き起こる「問題住宅」という位置付けになったけれど、
さまざまな意味でその挑戦の面白さには深く衝撃を受けていた。

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