日本建築学会北海道支部では、伝統行事として初冬のこの時期、
「北海道建築作品発表会」を開き続けてきている。
今回でなんと37回まで数えてきているということ。
こうした催事は、全国の日本建築学会各支部でも例がなく、
その活動の活発さが他地域への大きな刺激になって来ているという。
不勉強にして、そうであるということを初めて知った。
いつも開かれているので、当然このような発表会は全国で開かれているものと
頭から思い込んでしまっていた。逆にどうしてやらないの、と思う。
このことは詳しくは調べていないので、断定して書くことは避けたいけれど、
それは別にしても、北海道の建築・住宅がこういった相互批評の場を
積極的に確保し続けてきたのだということは、すごいことだと思う。
こういった機会を確保し続けてくることで、
地域としての建築の「共有体験化」が進展して、豊かな常識も育まれる。
常日頃感じていた他地域とのちがいの大きな要素だと思う。
わたし自身も最近は、本州地区での活動が多くなってきて、
この作品発表会はしばらくご無沙汰していた。
建築家の藤島喬さんからお誘いいただき、ちょうどスケジュールも合ったので、
久しぶりに丸1日、たっぷりと参加させていただいた。
そのあとには懇親会まで全参加させていただき、みなさんと交流できた。
たぶん、5−6年くらいは間が空いてしまった。わが身を恥じる思い。
地域の中でどんな思いを持って建築を作ってきているか、
メディアの人間として、そういった機会を失してきたことを自戒したい。
まずは、高年齢層から若い独立し立ての設計者まで、
実に幅広い世代からの参加者があって、まことに自由度がすばらしい。
ややもすれば、権威的・権力的な傾きもある「建築界」にあって
まことに清々しいような自由さが横溢していた。
建築と言うことの前では、そういったおかしな価値感はあり得ないと再認識。
で、何回かに分けて、発表された作品をご紹介したい。
きょうは、米花建築製作所設計の「掘立柱の家」です。
立地は北海道岩見沢市栗沢町の農家住宅。
開拓期に入植されてから5代目という当主の住宅ですが、
入植当時の「原生林」を想起し、掘立柱の林立が力強く居住空間を支える、
そんな住宅の計画を立てたのだという。
先人へのリスペクトをそのように表現したいと施主ともども考えた。
いくつか、当然のように懸念されるポイントは浮かんでくる。
1つは、掘立柱根元部分の耐久性問題。
わたし自身もこういったイメージの建物は事務所で構想したことがあったし、
その一部は古い木製電柱の林立で実現させたけれど、
根元部分の防水が難しくて、結局10年ほどで引き抜かなければならなくなった。
2つ目は建物下部に「中空」ができることでの熱損失問題。
こちらも自宅兼用事務所のときに構想したけれど、
設計者からは熱損失が大きくさらに風の影響でそれが倍加すると
説得されたことを思い起こしていた。
きのうの発表、さらにその後の接触ではこれらについて詳細までは
ヒアリングできなかったけれど、相応の対策は練られている様子は知れた。
断熱層の連続など、対応は折り目正しく設計されている。
どんなに建築的チャレンジをしようとも、住性能に真摯である姿勢は共鳴。
いろいろと全国的な対応もしてきている中で、
こういった北海道でのチャレンジの数々は、まことに勇気を与えられる。
多くの気付きと、発見を体感することができた稀有な機会でした。
発表してくれた多くのみなさんに感謝します。
また、明日以降にVOL2,3と掲載していきたいと思います。乞うご期待。
Posted on 12月 2nd, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅取材&ウラ話
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