きのう「台所」を取り上げた二子玉川の民家園、古民家です。
晩秋の陽射しの中、陽光をたっぷりと受ける南面大開口のたたずまい。
大きな茅葺き屋根が軒を作って、適度の日射制御を作りだし、
室内で実現されている「いごこちのよさ」はこの上ない。
この「ひだまり」の空間で寝転がって過ごす「環境」は、
いろいろな側面で解析してみるべき「快適性」を持っているだろう。
まずは日射に対して素直で、まことにパッシブな作りだと思う。
夏場には大きな庇が日射を遮ってくれ、冬場には低角度の日射が内部奥まで達する。
要するに人類普遍的な工夫であって、ごく当たり前のことだと思う。
南側面は広場のような開放空間が広がっている。
縁側を下りていけばすぐに転げ回れるような外部空間。
そのアクセスも、半外部である縁側が融通無碍な空間性で担保している。
この、縁側空間は日本人の住宅の特徴であるのかも知れない。
日本は大陸の東側に位置して多雨気候が特徴。
年間降雨量が1600mmだそうで、ほうっておいても緑の繁殖力が旺盛。
湿潤という気候条件に対して、家屋の工夫として縁側が重視された。
気候条件に対してこの縁側で、きわめて通風性豊かに過ごしてきた。
融通無碍さは、人間のコミュニケーションでもこの縁側での交流が重要。
お隣近所付き合いの濃密さは、この縁側での社交が大きかったように思う。
座敷の畳敷き空間になれば、格式が重視されるけれど、
この縁側の板敷空間であれば、いつでも外部に出られる自由さがある。
床面は縁側の板敷きと畳でコントラストが効いている。
この足裏で感じる空間認識は、日本人にとって決定的だっただろう。
天気のいいときはこの縁側空間が主たる場であった。
この空間で過ごす「天気のいいとき」の温熱環境を考察してみるべきではないか。
陽射しにくるまれる輻射熱的心地よさというものはどのように解析できるのか。
そうした分析で、四季それぞれの「いごこち」をあきらかにして欲しい。
現代が獲得した断熱技術を活かした空間が基本であることは言うまでもないが、
そこではいわば人間の皮膚感覚的感じ方の「コントロール」が可能なので、
実現を目指すべき「ここちよさ」には、こういった伝統的空間が持っていた
独特の「民族的」いごこち記憶というものがあると思うのです。
パッシブということは、すぐれて「その土地に似合う」という意味が大きい。
現代的断熱住宅で、四季折々の日本人的感覚が継承できるようにしたい。
そんな願望を抱き続けています。
Posted on 12月 1st, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 古民家シリーズ
コメントを投稿
「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」
You must be logged in to post a comment.