きのうは仙台市内の古い街並みのなかの住宅を取材。
古くからの街道筋の住宅地に建てられた家でしたが、
近隣になんとも面白い家並みを発見してしまいました。
写真がその様子なのですが、なんと、店舗に使っている古い瓦屋根の建物を貫通して
通り抜けていくような小路の左右に、小住宅が密集していました。
手前の道は江戸期からのメーン道路で、
道路幅はたぶん8mほどというもの。
車社会ではない時代としては十分な賑わいをたたえた
素晴らしい繁華街だったに違いないのです。
そうした時代には、きっと長屋的な賃貸住宅の需要があって、
前面建物の持ち主が、後ろの敷地も所有していて、
徐々に小さい賃貸住宅を建てて、貸していたに違いありません。
そうしたことが続いてきて、いまに至っては、
もう、その賃貸住宅の貸し手も借り手も、抜き差しならないほどに現状が固定され、
そのまま、時間が停止したような街並みとなって、
現代にも建ち続けている、ということのようです。
(こうした見方は、わたしの推測ですので、必ずしもこの写真の家が
そうであるとは断定できないことはご理解ください。)
古い都市の場合、このような形での固定化されたような土地利用というのを、
たいへん多く目にします。
所有権が明確ではあっても、賃貸している住人の権利が認定されているので、
たとえ、貸し手が土地利用を現代化したいと考えても、
事実上、手も足も出なくなってしまうのが、多くの実態。
法律は、多くの場合、こうしたケースでは既存状態を追認する方向で運用されます。
もちろん、公共による強制的な再開発など、夢のまた夢。
なのですが、たとえば都市防災という観点から見たときには、
非常に危険な状態が、むしろ追認されていると言えるのですね。
1階に、こうした通路空間を貫通させた瓦屋根の建物って、
まず、相当に危ない建築といえると思います。
また、万が一、地震などが来たとき、この小路の奥に住む住人は
たぶん、崩落する建物に逃げ道を塞がれてしまう危険性が高い。
複雑な権利関係が、入り組んで、にっちもさっちもいかなくなるんですね。
タイトルのように、現代の建築法規を当てはめてみれば、
現状が不適格な家が、それも借家法という法律に則って、
適格に存続すべきである、というようになっているワケなんですね。
まぁ、パラドックスとも言える。
この現状のなかでは、小路にある建物は、道路とも認定されない通路にしか
「接道」していないので、建て替えることも出来ない。
もっといえば、そもそも工事車両も入って行けそうにないので、
リフォームすることもどうにも至難の業のように見受けられるのです。
こういうような例は、しかし、仙台や多くの東北の古くからの都市では、
いや日本の一般的な都市にはたいへん多く残されているのが現実。
こういう状況を解決するには、建て替えなどに必要な建築上の法規を
きわめて弾力的に運用するような、
いわば、「建て替え特区」とでもいうべき対応が取られる必要があると思います。
そうでもしない限り、こういう都市計画上の破綻は解決不可能でしょう。
大変難しいテーマが横たわっていると思います。
きのうはその後、行政側で、こうした都市計画に携わってきた方と
お話しする機会があり、さらにこの思いが共有できたのでした。
さて、いったいどうすべきなのでしょうか?
Posted on 10月 29th, 2006 by replanmin
Filed under: 「都市の快適」研究, 住宅取材&ウラ話
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