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【住宅は社会の「家族形態」文化をあらわす】

きのう、フランスの人類学者・エマニュエル・トッドさんのご紹介をしましたが、
かれが解明した人類の家族の形態の8類型というのに
激しくイマジネーションが刺激されています。
1.絶対核家族〜自由。個人主義、自由経済を好む。英米アングロサクソン。
2.平等主義核家族〜自由に平等が加わる。フランス・南欧・中欧。
3.直系家族〜秩序と安定を好み、自民族中心主義。ドイツや日本。
4.外婚制共同体家族〜権威と平等。ロシアや中国が分類される。
5.内婚制共同体家族〜権威よりも慣習が優先。イスラム教社会。
6.非対称共同体家族〜母系のいとこの結婚が優先される。インド南部社会。
7.アノミー的家族〜基本的に絶対核家族、社会の結束が弱い。東南アジアや先住民族社会。
8.アフリカ・システム〜 一夫多妻が普通。母子家庭の集まりに近い

かれのこの分類に従ってこういった価値観がどのように人間心理を規定し、
そして住宅を考えていくときに、どのように結果するのかと
当然ながら、強く興味がそそられていく。
他民族についてはそれほど多くの知見を持っていないので、
日本人と住まいの「カタチ」で考えをめぐらせてみている。
わたしたち日本社会はユーラシア大陸をはさんでドイツと
東西に大きく別れているのに、同じ「家族形態」を持っているそうだ。
人間はほとんどの場合、まず「家族制度」のまゆのなかで生まれ育つ。
あらゆる文化をそこで先験的に取得して、意識も形成される。
身体化したこの「家族制度」が生活文化の基底に存在するのだろう。
この指摘はまったく不意を突かれるような卓見だと思う。
わたしたち現代人は、文明発展の結果、
1の「絶対核家族」文化に向かって「進歩」していくのだと
知らず知らずのうちに「刷り込まれてきた」。
トッドさんは、この「核家族」は現代世界をリードした英米アングロサクソン社会に
特徴的に現れている相対的存在にすぎないとしている。
いやむしろ、核家族というのは現代、科学革命が始まる前には
世界の中で相対的に「貧しい」民族社会で選択された家族形態と分析している。
この制度の特徴は、個人主義を大きく育むものとも指摘する。
このような分析を日本のいまの住宅のありようとアナロジーすると
この間の「変化」の「起動的要因」がきわめて明瞭になってくる。
そして、これからの住宅のありようについても、想像力が湧いても来ます。

戦前までの日本社会はたしかに「直系家族」主義で、家系意識の枠組みが
最優先された社会だったし、その結果としての家の間取りも、
先祖礼拝の神聖空間を家の中心としてきたのは間違いがない。
それに対して戦争に負けることで「住宅政策」もまた、アメリカから直輸入した。
あくまでも個室の集積というような住宅認識が広がっていった。
こういった視覚からは、さまざまな気付きが得られてくる。
そんな静かな驚きを感じ続けています。

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