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建築設計業務は「請負」か?

面識もある東京の設計者のことが
本日の日経のメールマガジンで記事になっていましてびっくり。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20100224/539578/

なんですが、もっとびっくりしたのはその内容です。
わたしは建築の専門技術者とか有資格者ではないので、
その職務を巡っての裁判事例というのは、立ち入ったところでは
よく見えない部分もあるのですが、
通常、建築設計という業務とは当然のように親しい部分があります。
今回争われたのは、住宅設計において
「工事予定金額」というものが契約書に書き込まれていて、
それに対して実際に上がってきた見積金額とが大きく乖離していて、
その結果、
「一般に設計契約は請負契約」「予算を大幅に上回る設計を行うことは債務不履行に当たる」「既に支払われた設計料まで含めて全額返還せよ」
というような判決が出たということなのですね。
詳しく読んでいくと、
太陽光発電などエコロジカルな設備機器の占めている見積もり割合が多く、
大きく減額修正可能と思われるのですが、
そういう部分を含めて、
裁判官の設計業務への理解不足と思わざるを得ない部分が大きい。
建て主がいろいろな希望条件を述べて、それに対して
見積金額が過大になること自体は日常茶飯の出来事。
その間で、このケースの場合は、「工事予定金額」という数字を書き込んでいる。
この数字が、設計者の考えとはまったく違う形で
建て主側主張を後押しする結果になって、判決に及んだようだと思われます。

ことは裁判に関することなので
詳細な検討が必要と思いますが、
この問題の根底には、設計業務の法的解釈が
請負契約なのか、委任契約なのか、という点がある。
「一般に設計契約は請負契約」という断定はいかがなものかと思われるのと、
流動する見積金額を根拠に判決に至るというのもちょっと飛躍が感じられる。
で、設計者の弁明を見ていると、
今日的なテーマがどんどん出てきて、さもありなんという部分が多い。
とくに太陽光発電装置など、これまでの積み上げ型の建築工事の積算からは
かなり飛躍した単価のものが扱われるようになっている。
こういうものが「工事予定金額」総額を大きく押し上げてきている。
しかしそれは建築本体に対してはあくまでも装置的な
副次的なものであり、金額が大きく占めているとはいっても
「減額可能」という設計者の主張はきわめてわかりやすいと思います。

4割近く、本体に付加したオプション的なものが含まれています。太陽光発電装置や大型の雨水利用システム、木製の電動ルーバーシャッターなど、特注部材の費用を把握することも狙って、多めに盛り込んで積算してもらったもの

という記述がありましたが、それもその通りでしょう。
こういう流動的な金額が争われて、一方的な判断に至るというのは疑問。
判例としては確定したのだそうですが、
このような判例が及ぼす影響というのも計り知れない部分がある。
JIAと、建築行政の対話の様子も知っている立場としては
やはり現状の国家機関の「設計業務」への認識を改めて知らされる思いがしました。
<写真は横浜の様子、無関係です>

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