さてきのうも福島明・北海道科学大学教授の提起された
「直接外張り」断熱リノベ手法についての投稿を予定していたのですが、
トラブルがあって、1日空いてしまいました。
ことしの春にこの工法の現場見学会が札幌から小1時間の仁木町で
開催されたのですが、残念ながら道外出張で参加できなかった。
これまでの北海道の断熱技術蓄積でも基本になってきた、通気層を閉鎖し
住宅改修での熱性能向上を狙って断熱を外側で強化するとされた。
20数年前には高性能住宅とされた建物も、すでに更新時期を迎え
より簡便な断熱強化は焦眉の課題だと思われてもいるのだと。しかし、
「それでいいのか」という大きな疑問が当然のようにわき起こった。
しかもそれを、これまで断熱手法開発を先導されてきた福島さんがやった。
ということで、非常にインパクトがあるのですね。
常識的な「通気層の役割」は、下の図のようなことで、
暖房され加温された室内側から、防湿層を万一透過した湿気が、
断熱層の外壁側で結露を起こす可能性を防ぐ役割として
通気層工法が開発されてきたという常識。
それに対して、北海道ではすでに多くの住宅に於いて
きちんとした防湿層が担保され安定的な高性能住宅が実現している。
そうした条件の住宅であれば、大胆に通気層を閉鎖して、
壁の熱損失をもっと押さえようという実験的な取り組み。
既存構造に対して付加断熱していくので、
なるべく軽量な断熱材・外装材が不可欠とされたけれど、
それは現代の技術発展で容易に選択可能になってきている。
それこそ通気層工法がしっかりされて、構造材腐朽なども可能性が低い。
前北総研副所長としてこういった北海道の住宅技術レベル把握から、
今回の試行はあると言えるのだと思われます。
その意味では全国的にどうかといえば、不明な部分は多い。
通気層閉鎖時の熱性能の実験結果も上の写真のように示されていた。
これによると、通気層を空気が移動することでの熱損失と、
一方で通気層閉鎖での熱性能向上が明瞭にデータ開示されていた。
Eは、既存の状態。Dは、通気層をそのままにして断熱だけ強化した場合。
Cは上下端で通気層を閉鎖した場合で、
Bは上端で通気層を閉鎖した場合、Aは下端で通気層を閉鎖した場合。
それぞれでの熱損失の様子がハッキリしている。
すでに北総研でこういった試験は試行されてもいた、ということ。
このサーモグラフでは下端部分で熱損失が見られますが、
福島先生によると、これは試験体が外側断熱層と室内側の位置レベルが
間違っていたものであり、大きな瑕疵ではないとされていた。
本来の水分放散目的では、すでに防湿層技術が大きく向上し、
現実的には通気層で空気流動させる意味は薄らいでいるということ。
であれば、より大きな問題は熱性能の低下対策としてこれを閉鎖し、
断熱強化していくべきなのではないかという考え。
通気層は上でも下でも、あるいは上下閉鎖でも効果は大きくは違わない。
福島先生としては、上端閉鎖が合理的と考えられているとのこと。
この提起に対していろいろな反応が寄せられています。
外部雨水侵入排除の通気層の機能はどうなるのか、というご意見も。
また、現在の住宅性能論議が設備選択の方に大きくシフトして
ほとんどがシミュレーションでの論議になってきていることに対して、
北海道の断熱技術をリードされてきた立場から、
むしろ革新的に工法論議のさらなる進化を目指しているのではないかと、
そんな感想を述べられる方もいました。
すでに北海道では既存外壁の下端だけ、もしくは上端も剥がして
圧縮グラスウールを挿入し気流止めとし、その部位に構造合板も補強して
断熱と同時に耐震性も向上させる技術が開発されていますが、
この工法がなかなか普及が進んでいないということも、
福島先生的には大きな要因になった今回の提起のように思われます。
道内の若い世代の研究者のみなさんからも反応が大きく、
そうした技術進化の触媒になっていくような予感もしてきています。
地域住宅メディアの人間として、その思いには大いに賛同する次第です。
Posted on 12月 11th, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅性能・設備
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