本文へジャンプ

戦国の戦争実態

1861

「百姓から見た戦国大名」という歴史書を読んでおります。
戦国時代というと主に武士の親玉、戦争に勝利した人間を主人公にした
偉人伝記的な認識が刷り込まれやすいけれど、
そんなバカげたことはないだろうと思う次第。
歴史小説家の典型でいえば、山岡荘八などが当たるでしょうね。
あのようなアプローチでは、
たとえば現代での政治家ですら、みんな立派な人間で
社会正義を実現するために立ち向かっている、というような
どう考えても合理性に乏しい歴史判断になってしまう。
まぁ歴代のNHK大河ドラマも、五十歩百歩。
たぶん、みんなそういった醒めた視点は持っているでしょうが、
そういう醒めた視点からの体系的な
歴史分析アプローチ研究には出会ったことがなかった。
そんななか、網野善彦さんの電子本を1冊、読み終わったところ、
Kindleから「こんな本もありますよ」というオススメがあって、
素直に電子本を購入したうちの1冊がこの本であります。
著者は、黒田基樹(くろだ もとき、1965年4月〜)さん。
日本の歴史学者、駿河台大学法学部教授。
専門は日本の戦国時代・織豊時代史で、
相模後北条氏や甲斐武田氏に関する研究を展開する。
というお方であります。
不勉強で、名前もまったく存じ上げませんでした。
『戦国期の債務と徳政』校倉書房(歴史科学叢書)2009
というような著作もある方で、戦国期の社会実態の様子が
その経済的な側面、社会発展的なとらえ方で把握され展開している。
この「百姓から見た戦国大名」という本も、そうした把握が見える本です。
なぜこんな本に惹かれたのかと言えば、
やはり最近の「戦時の状況」をめぐっての国際的な対立ということが大きい。
現代の倫理意識に基づいて過去を断罪するなどと言う
バカげたことがまかり通っている現状が隣国にある。
過去に学んで未来を考えるのは当たり前だけれど、しかし
その実態について、もっと冷静に捉える必要がある。
これまでの歴史において戦争時、どのようなことが起こっていたか?
もっと冷静な歴史の発掘が必要だと思ったのが契機でしょうか。
この本では、といってもまだざっとしか読んでいませんが、
戦国時代の為政者、戦国大名とその地域の民衆が、
どのようにして戦争に駆り立てられ、
あるいは主体的動機を持って向かっていったか、が解明されている。
そこでは、基本的な「飢饉」状況から、他国への侵略戦争によって
「百姓」たちが、「好景気」を謳歌していた実態が解明されている。
武田信玄という他への侵略を旨とした武将は、
つねに甲斐国外に戦場を展開し、それに従う「軍勢」という名の百姓たちには
「乱取り」という略奪行為を、むしろ奨励していたのだという。
この略奪行為には基本的な食料から家財などはもちろん、
当然のように人身売買も含まれ、
戦争後、勝利者側の陣営では戦利品としての
人身売買、女性や奴隷的に使役される子どもなどの
取引が行われていたのだという。その単価も、
現代貨幣換算で2000円とかの数字まで解明されている。
このような略奪経済が、甲斐国内的には好景気を誘発し、
百姓たちに、「いい時代」という意識も生んでいた。
百姓はけっして武家権力側から搾取されていただけの
かわいらしく、いたいけな存在ではなく、
ふてぶてしくどう猛でもある存在として活写されている。
秀吉の海外派兵も、国内では「平和」が実現してしまって
そのような白昼公然たる略奪経済機会を
百姓たちに提供できなくなったことを明示しているのだと。
「一歩でも国の外に踏み出して戦え」というように武田信玄は
遺言したとされていますが、その本意とはそのような「兵の実態」を
証しているということができるのでしょう。

いやはや、読む進むほどに、恐ろしい実態であります。
しかし、まぁ、きれい事ではなく、そうだったんでしょうね。

コメントを投稿

「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」

You must be logged in to post a comment.