この山形の家の建て主さんは北海道の出身者ということ。
直接お話を聞く機会には恵まれなかったのですが、
設計者から聞いた話では、
この写真のような「日本の夏」の風情を実現したかったということ。
寒冷地に育ったことで、民族の原風景としてのうだるような夏に憧憬の念を持っている、
っていうようなことなのかなぁ、と想像してしまいました。
わたし自身も、そういう思いを強く持っている方なので、
こういう情景には強く思いをいたしてしまいます。
四季の移ろいのなかで、日本が持っている炎暑の夏は、
日本人のDNAのなかにしっかり刻み込まれている生活文化のバックボーンとして、
やはりなくてはならないものだと感じます。
そのような夏の極みとして、
甲子園球児たちの汗と涙のドラマがあったり、
お盆というクライマックスがあったりする。
そういうなかで、このようなすだれと縁側越しに、そよと動く風に
日本人は敏感な感受性を育て上げてきたのではないか。
きわめて「高温多湿な」この空気感が、わたしたちの精神性にあたえたものは、
貴重でかけがえのないものだったのだと思います。
ただしそれは、家の作り方としてはあくまでも寒冷な冬を旨として、
その克服性能をしっかり満たした上でのこと。
そうでない場合は、作り手の建築技術者としては、
あまりにも、施主の情感性にだけ頼り切ったような姿勢を感じてしまいます。
そのような作り手の姿勢は、やはり建て主の側からは困りもの。
あくまでも、性能をしっかり担保した上で、
こうした思いを実現させようとする姿勢に、建て主側は共感と信頼を覚えるものでしょう。
全開放の夏と同時に、
厳しい冬に対峙できるのだ、という安心感があってはじめて、
こういう風情も、味わい深いものになるのだと思います。
Posted on 9月 8th, 2007 by replanmin
Filed under: 住宅性能・設備
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