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窓辺のしつらいから

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写真は秋田市での取材でのもの。
ディテールにたいへんなこだわりを持っていた施主さんで、随所に
細やかな小物使いが見られて感銘を受けました。
いるんですよね、こういう方。
建築を建てる側って、基本的には「背景」としての演出は出来るけれど
最後の空間の質を決定づけるのは、やはり施主さんの感覚。
この写真で言えば、上下窓や壁の質感・色合い、棚の造作といった部分は
建築の側の事柄といえますが、
照明などの計画、飾るものの選択、ここの場合では台所シンクの選定、
といった部分は、施主支給もふくめて施主さんの感覚に負うところが大きい。
こういう「空間への想像力」っていうものが、
自分なりに持っているって、なかなかいないんですよね。
たぶん、こちらの方なら、インテリアコーディネーターみたいなことも
素地としては持っているのではないかなと思います。
(実際に職業として似合うかどうかは、その他の要素、
主に、コミュニケーション能力の部分が重要ではありますけれど)
あるひとつの旋律を持った空間意識、美の感覚のなかに包まれるというのは、
何とも言えず、ここちよさを感じるものです。
考えてみれば、こういうことを感じさせるような教育っていうのが、
存在していないような気がしています。
こういう感覚って、生きていく上では大切な部分なのです。
「空間を豊かに楽しむ能力」といったことなんですが、
情操教育のなかでも、きわめて大切だと思うのです。
いい音楽を楽しむ、いい絵画や芸術を楽しむ、
というのは教育カリキュラムに入っているけれど、
いい空間を楽しむ、っていうことについての土壌がないと思います。
いまのところは、こうした能力はひたすら人的な体験の集積のみに
頼って存続してきている、あるいは、相伝的に
人から人へ、技術伝承されている、ということなのでしょうか。
こういうここちよくデザインされた空間は、
ひとを和ませるし、ひとの本然に戻させるような時間を与えてくれます。
是非、こういう感覚領域についての
教育プログラム、どこかが本格的に取り組んで、
一般のみなさん向けにやってみたらいいのではないでしょうか。
けっこう、現代人にとって大切な心的領域だと思います。

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