さて本日は北海道の工務店グループ・アース21の例会のご報告。
久しぶりに札幌市内の4箇所の住宅を見学して歩きました。
こういった相互研修の機会を大切にしているのが北海道の作り手たちの特徴。
地域の作り手として、場合によってはライバルとなる相手と
情報を公開しあい、現場で論議を交わすことで、
情報の質やレベルがどんどん向上していく。
ここ数回、埼玉の作り手でもあるハイシマ工業さんも参加されていますが、
さまざまな気付きに満ちた機会と感嘆されていました。
で、きのうの見学コースの中でも面白かったのが
このアシスト企画さんのモデルハウス事例。
この住宅が3軒目ということもあり、疲れが出てくるタイミングでもあったけれど、
室内に入った途端に、多くの参加工務店さんたちが、このリビングで
すっかり「まったり」としてしまっていた(笑)。ここちよく癒される・・・。
この空間は周囲から床レベルが30cm程度下げられていて
その床面には黒っぽい左官仕上げが採用されていた。
そこに吹き抜け空間が広がり、暖炉が据え付けられていた。
外は雪が続いていたけれど、窓は大きな4連窓でよく日射取得されていて
陽だまりっていうような明るい空間でもあった。
さらに、中央が空いたようにレイアウトされて窓辺の座りの良い場所と
長いすソファが対置されている。
その間の距離は約2.5m程度が確保されて間にはテーブルはない。
床面には高価そうなカーペットが敷かれている。
不思議なことにいつも空間を作り続けているプロのみなさんが、
ほぼ一様にこの空間のなかで、すっかりへたり込んで
長いすに、窓辺にと、腰掛けて動かなくなっていたのです。
かくいうわたしも、すっかりソファに座り込んで動かなかった(笑)。
一段落して、じゃぁ、どうしてこんなにまったりするのかに意見交換が向かった。
一般的にバリアフリー仕様ということで床面に段差をつけるべきでない、
という空間デザインが推奨されている。
しかし、この空間では約10畳ほどのスペースが一段下げられている。
そういう段差という意味では「人にやさしくない」。
けれど、空間の印象としてはまことに「人にやさしい」。
用途としてはこれもあんまり明確とはいえない。
寸法もなんとなく「ちょうどいい」けれど、さりとてなにかに使いやすいという
そういった「用の美学」はどうも感じられない。
作ったアシスト企画さんに聞いたら、この一段下がったリビングのアイデアは
営業さんからの提案があって実現したものだという。
またこのモデルハウスはさっそく売却が決定もしたのだという。
どうも、いまの建て主さんの「物言わぬ声」にピンポンでハマっているのでは。
そういえば、みんなが暖炉に火を入れようとしていたのですが、
火のある空間の記憶的なぬくもりにこういった空間が
いまの時代の空気感にぴったりなのであるかもしれない。
この建物はnearlyZEH仕様なのですが、
やや無機質なZEHという概念に、こういう彩りのある空間を対置すると、
一気にリアリティが出てくるものであるのかも知れませんね。
Posted on 12月 6th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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