わたし自身は年とともにお酒が苦手というか、
お付き合い程度で、だんだんと飲まなくなってきているのですが、
それでもときどき飲むとなると、地酒には惹かれる。
戦後の高度成長期には日本酒は大手メーカーが席巻する市場になっていた。
市場そのものが大手スーパーの独占体制になり、
そうしたバイヤー制度の中で小さな作り手では販売のスペースも確保できない、
大手メーカーでなければ販売に不利になる
そういった集権的な「市場」構造になっていっていた。
地域でがんばっていた中小の酒蔵は、やむなく大手の下請けになって
全国ブランドの大量販売の酒にブレンドされて、
どこの誰が作っているかわからないようなものとして流通していた。
極端に言えば、酒であればなんでもいい、
国が定めた「日本酒」のアルコール基準数値だけで
判断されるような市場構造が出来上がっていた。
しかし、その時期は同時に日本酒離れというようなことが盛んに言われた。
市場で流通しにくくなった、そういう「大量販売」思想で
すべてが価値判断されることに、市場からの揺り戻しが働き始める。
「なんもうまくないっしょ」というユーザーの悲鳴が起こり始めた。
とくに嗜好品であるお酒は、
「酒であればなんでもいい」価値感とはそぐわなくなっていった。
そういった市場での大きな価値転換が起こり始めて、
全国の地酒ブランドが復活しはじめた。
わたしもときどき行くお店では、こういった写真のような棚から、
「きょうはこれ、飲んで見ようかな」と思って見る。
結局、人間の感覚の世界ではなによりも個性や地域性が優越し、
「おれの好み」という感性マーケット化してくるものなのだ、と。
よく地域工務店と、この地酒ブランドの関係は対比される。
酒であればなんでもいいとスーパーで買うという方向性と
大手ハウスメーカーで住宅展示場で「選ぶ」という方向性は近似する。
地域工務店の戦略として、そういった強者の戦略への追随は
はたして本当に有効であるのか。
究極的なものづくりと言うことができて、
しかも、他のどこでもないその土地の上に長く建ち続ける住宅が
そういった建てられ方で本当に地域の景観になっていくのか?
どうも地酒の世界で起こったことが、
やがて住宅の世界でも普遍的なことになっていくように、
思われてなりません。また、そうあって欲しい。
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Posted on 3月 9th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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